Kojin Kumagai

April 3, 2022

Lecture on 3.11

日本語は下へ:
I was very lucky to be the one to talk about this to Estonian students, on the same day it happened.

Natural disaster is one of the most unique characteristics of Japan. And without understanding its brutality, you don’t get to see the full picture of why it's so beautiful at the same time.

Also, helplessness in the face of nature has shaped the mentality of the Japanese people, more than anything else.

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(以下は先日ツイートした内容を少し修正したもの)

この3月11日という日に、エストニアの高校生に震災の話をする機会に恵まれた。というわけで、講義の内容と準備しながら感じたこと、生徒たちの反応をざっくりまとめてみる。風化させないためにも。

災害大国、日本

まず前提として、この国の特性上、自然の美しさだけでなく残酷な部分とも向き合わなければいけない、それが日本で生きるということ。国土の下を覆う4枚のプレート、海に囲まれた島国でありながら、国土の約70%が山であり平地が少ないなど、自然災害にこれほど好条件な国はない。

これらの要素と自然災害の関係を単純化すると、
・プレートが多い→地震、火山噴火
・海に囲まれている→津波、台風、大雪
・山が多く平地が少ない→洪水、雪崩、土砂崩れ
となる。

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このような特性から、日本中で様々な自然災害が起こりうるが、中でも地震と火山は特にやっかいだ。予測が難しい上に甚大な被害をもたらす。実際に、日本の国土面積は世界のわずか0.25%だが、マグニチュード6以上の地震の約20%は日本で起きている。活火山も国内に111あり、世界の約7%を占める。

もう一つ着目したいポイントがある。日本の自然災害による被害額は、世界における約18%と高い割合だが、死亡者は1.5%のみであるということ。つまり、災害の多さ、被害額の大きさに比べて、亡くなる人の数が極端に少ない。

これらを踏まえて、3.11を振り返ってみる。

3.11の悪夢

3.11(東日本大震災)は戦後最悪の自然災害である。

マグニチュード9.0が日本の観測史上最大であるだけではない。16~25兆円という推定被害額は、世界で見てもダントツの数字だ。その規模なんと、エストニアのGDP約8年分である。(エストニア人なら驚くはず)

そして3.11は3つの災害に分けることができる。
・最も広範囲に被害をもたらした「地震」
・最も多くの命を奪った「津波」
・最も長く生活を脅かす「原発事故」

恐ろしいのは、これら全てが1時間足らずで起きたということ。そして私たちは、直前まで何一つ想像すらできなかったということ。

本震は6分以上続き、震度4以上の余震は20日間で113回記録された。本震の15分後に日本に到達した津波は、震災における90%の命を奪った。

福島原発の事故は、チェルノブイリ原発事故と並んで史上最悪レベルと評価されている。廃炉には30~40年かかる見通しだ。11年経った今でも、まだまだ先は長い。

一瞬の出来事であったが、奪われた命と時間はあまりにも多かった。この震災による死者、行方不明者は1万9000人にのぼり、2500人の安否が確認できていない。そしていまだに約4万人が避難生活を余儀なくされている。

ここまでが3.11の全体像。

もちろん、奪われた命の尊さや、その後の途方もない復興への道のりは言葉では言い表せないものがある。震災をきっかけに表面化した問題も色々とあった。ただここでは、3.11を経験した私たちが、次に起こりうる災害にどう備えるか?という部分に着目したい。

次に来る災害

近い将来、高い確率で起こるとされている地震を2つ紹介しよう。

一つは「首都直下型地震」、現在の予測はおおよそ以下の通り。
・マグニチュード: 7.0
・死者数: 2万3000人 (70%が火事)
・経済被害額: 95兆円
・発生確率: 30年以内に70%

*確率の算出方法によって数字は大きく異なる

もう一つは「南海トラフ巨大地震」、こちらの予測はおおよそ以下の通り。
・マグニチュード: 8.0~9.0
・死者数: 32万人
・経済被害額: 220兆円
・発生確率: 30年以内に70~80%

こちらは100~200年間隔で発生していて、最後の記録が76年前となっている。

どちらも想像したくもないほど恐ろしい規模である。しかし地震の発生確率は過小評価できない。明日起こってもおかしくないからだ。

一方で、対策を進めれば被害を大幅に減らせるのも事実。一人ひとりが現状を知ることで、起こる前から協力しあえることは沢山あるだろう。

どっちの災い

最後に、2種類の災害について考えてみたい。

「天災」と「人災」である。

3.11では、「地震」と「津波」は天災である一方、「原発事故」は人災とする見方が多いだろう。線引きは難しい。ただ今後の災害は天災のみに止めることができるか否かは、日本に住む私たちにかかっている。


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...とまあ、講義の内容はこれの50%くらいで、加えて僕の拙い英語なので、20%でも伝わっていればいい方だろう。

それでも生徒たちからは、「地震のことはある程度知っていたが、実際の状況を知って驚いた」といった反応が多かった。しかし、日本の自然に対する印象は変わったか?という質問には、ほとんどの生徒が「特に変わらない。日本の自然はそれでも美しい」と答えていた。

自然は美しさと残酷さの共存であると、改めて実感した瞬間である。

ちなみに、エストニアは自然災害がほとんどない国である。治安もいい。ただかといって、安全に暮らせるとは言い切れない現状も、今はある。歴史を見ても、地形を見ても、これほど違う2つの国。国を超えて関わり、お互いの繁栄を願えること、これほど充実した繋がりはなかなかない。

それでは。

P.S.
日本の地震に関しては、NHKの災害情報サイトが参考になる