Haruki Nishimura

March 9, 2021

標準注意検査CATは全部測定しなくていい

臨床で認知機能評価をしているときに考えていることを書いてみました。

注意とワーキングメモリは複数の下位要素が提案されています。
配分的注意や持続的注意、実行制御などなど。
そして色々な要素を測れるようにCATでは様々な種類の下位検査が用意されています。

ただし、一般にそれらの下位要素間には高い相関があるため、ある程度検査を絞っても結果は収束していくと考えられます。私は、なるべく以下の検査を優先的に行って、十分そうなら全て測定せずに打ち止めにしています。なお、CATをやる前に言語や視空間認知機能の程度を確認しておく必要があります。

  • Cancellation and Detection task(抹消検出課題)
  • Digit Span(数唱)
  • Tapping Span(視覚性スパン)
  • Auditory detection task(聴覚性検出課題)
  • PASAT/Memory Updating Test(PASAT/記憶更新検査)

以下に、それらの検査の主要な機能を列挙しました。
ここでは注意に関わるプロセスとして、(1)感覚器からの入力、(2)短期記憶による保持、(3)中央実行系(実行機能)による制御の3段階を想定しています。そして特に(1)と(2)では視覚/言語といったモダリティによって区別しております。

  • 抹消→視覚・空間入力、視覚探索、処理速度
  • 聴覚性検出→聴覚・言語入力、注意の持続性
  • 数唱→言語性短期記憶
  • 視空間スパン→視空間性短期記憶
  • PASAT/記憶更新→聴覚・言語入力、注意の持続性、算術処理の習熟性、中央実行系機能

このバッテリーで、言語/視空間の処理それぞれで、入力レベルの処理、短期記憶レベルの処理、実行機能レベルの処理をおおよそ網羅できていると思われます。PASATかMemory Updatingか、どちらがいいかですが、PASATができそうな方ならPASAT、できなさそうな方(計算にかなり抵抗がある、注意がかなり落ちていそう)についてはMemory Updatingをする、という決め方を私はしています。PASATは人によっては苦痛がかなり強く、無力感を喚起しやすいのでむやみやたらと使うのは避けた方がいいかと思います。

上述のようにCATにおいてより中央実行系ぽい指標としては、PASAT/Memory Updatingが該当すると思いますが、どちらも聴覚性の課題で、さらにいえば数字に依存しますし、PASATは計算能力にもかなり左右されますので、その点も注意が必要です。

Memory Updatingもチャンキングなどの方略が得意だと教示通りの3つや4つ以上の系列を覚えてしまい、全然記憶更新しないというケースもありますのでそのあたりは主観的な報告をよく聞いていく必要があるかなと思います。