人は、様々なバイアスから、統計的な基準率を無視し、誤った判断を下してしまう。直感的でコントロール出来ない判断プロセスをシステム1(ファスト)、論理的でコントロール可能な判断プロセスをシステム2(スロー)と定義し、なぜ誤った判断を下してしまうかについて研究した本。
システム1は、因果関係が形成されるシナリオは扱えるが、統計的な推論には弱い。対して、システム2は、統計的な推論も可能だが、怠けがちである。
バイアスから抜け出すためには、ベイズ理論を知っているかどうかという主張が目立った。
個人的には、平均への回帰という章がとても面白かった。物事に完全な相関が成立しないのであれば、必ず平均への回帰が起こるというものだ。とりわけ、直感的思考は平均回帰を無視しているという内容は興味深かった。
また、予測はなぜ外れるかについては、BIG THINGSのベント・フリウビアと同じ主張で、人は過去の分布に関する情報を軽視または無視しがちであると説かれた。エキスパートによる直感や予測より、実際に起きた事実による統計的な予測の方がはるかに精度が高いという。(これには、参照クラス予測法という専門的な名前が付いている。)
下巻では、システム1、2の特徴を掘り下げた内容。特に、経験する自己と記憶する自己の矛盾を指摘した内容は面白かった。