Yusuke Hatanaka

December 31, 2023

This month I read. Dec, 2023


Spotify に務めていた著者による、従来型の企業とスタートアップなテック企業のプロダクト開発に対するマインドセットの違いが語られている。
従来型とは、納期と予算の範囲でものづくりをするプロジェクト型のプロダクト開発のことを指している。対して、テック企業のプロダクト開発には予算も納期も存在していない。あるのは企業のミッションと、チームへの信頼(権限委譲)と、技術を一級市民として扱い品質への妥協を許さないこと。

今となっては本書の内容が極めてセンセーショナルというわけでは無さそうだ。しかし、従来型の企業や、組織やビジネスがスケールしたことにより、従来型回帰への強い力学が働き始めた企業が、これらを体現するためには、会社経営の意思決定そのものを変える必要があり、道のりは険しい。加えて、本書では従来型の企業がテック企業にトランジションするための具体的なプロセスは語られていない。大変だがやらなければならないといった内容に留まっている。ただし、仮にコピー可能なプラクティスにでっち上げたとて、それをそのまま取り入れようという考えこそ著者の意図に反するはずだ。本書の内容を噛み砕き、自ら考え行動に移すことが求められている。従来型の企業はチームへの信頼ではなく管理の力学が強い。管理をするためには従来型の方が楽である。しかし、それではテック企業には勝てないというのが著者の考えと読み取った。


OSI参照モデルのデータリンク層(L2)からアプリケーション層(L7)の各レイヤーにおけるパケット通信の仕組みが解説されている入門書。
仕事で Web アプリケーションを開発していても、普段は L4 より下のレイヤーを意識することはあまりない。そういう背景から、特にデータリンク層や IP 層の解説を興味深く読むことが出来た。
ネットワークを扱うソフトウェアエンジニアなら、読んでおいて損は無いと思う。


脅威モデリングの重要性に始まり、デジタルデータの暗号化と複合の基本的な仕組みとなる共通鍵暗号化技術と公開鍵暗号化技術の解説、それからなぜ PKI が必要なのかとその仕組みが丁寧に解説されており、今更ながら必読といった内容。マスタリングTCP/IP 入門編と合わせて読むと尚良い。
初学者にとって有益であるのは勿論のこと、経験者が散らばったネットワーク知識を整理する目的で手にとっても良さそう。


複式簿記の入門書。決算書を構成する5つの要素(資産、負債、純資産、費用)に対して、取引を借方(左)と貸方(右)に仕分けする。2時間程度で読むことができ、財務諸表がある程度わかるようになるのでコスパが良い。


京セラ創業者の稲盛和夫氏による経営哲学の話。
人間として正しいことにもとづいて経営をするという経営哲学があり、特に会計においては、厳格な透明性を維持することによって社会的にフェアであることが会社経営において重要であるとの主張。第一部では、それを実現するための7つの原則が語られる。
常識とされてきた会計の慣例を、経営の役には立たないのであれば意味は無いとして、自らの経営哲学を貫く形でやり方を変えていく話には、理路整然とした整理がある。
また第二部では、稲盛塾という勉強会における経営問答として、参加者の相談に対し、第一部で語られる経営哲学をベースとした回答の実例が紹介されており、こちらも読み応えがある。


ソフトウェアエンジニアリングにおけるネーミングに特化した指南書。クリーンコードやリーダブルコード、コードコンプリートといった書籍で語られる内容と近いが、本書はネーミングのみにフォーカスした内容となっている。
前半はネーミングがなぜ重要であるかを Understandability、Conciseness、Consistency、Distingishability の4つの観点で原理原則としてまとめており、後半はそれらをどのように適用するかが書かれている。 内容としては前半だけでも十分かなと感じた。末尾に付録としてよく使われる単語の対義語一覧が載っており便利。


そもそも原文なのか翻訳によるものなのかはわからないが、内容が難解であった。個人的には読み進めるのが困難であり、2章途中で諦めた。
人からおすすめされたらまたチャレンジしてみようか。


イーロンマスクのこれまでの半生を描いた伝記。
内容は極上のエンタメといった感じで、嵐のように次から次へとストーリーが展開する。本書によるイーロンの描かれ方から、こち亀の両津勘吉のような印象を受けてしまった。めちゃくちゃ面白かったのでおすすめしたい。


プロダクトカンパニーの組織活動の中で、品質に対する優先度をどのように向上させるかといった観点で書かれた本。
テストや品質管理についての具体的な技術プラクティスの解説ではなく、品質を重視する組織をどのように作っていくかといった組織論に近い内容。
個人的には、8章「チームと会社の成長指標」と10章「品質戦略のリード」の2つの章が良かった。顧客の価値から組織の成長指標を定め、成長指標を向上させるために、明確なビジョンの上に戦略を立てる、といった内容。また、5章「プロダクトの成熟度と品質」も良かった。プロダクトの成熟度によって品質に対するアプローチの内容や優先度は変えなければいけない。これはその通りだと思う。
技術的な話はほとんど出てこないので、あらゆるロールの人におすすめ出来る本かなと思う。


イーロン・マスク上下読了ロスにより、今更ながら同じくウォルター・アイザックソンによって書かれたこちらの伝記も手に取った。こちらも期待を裏切らない内容でとても面白い。

MVP(Most Valuable Publication)

About Yusuke Hatanaka

I'm working as a software engineer in Japan. I like reading, watching basketball game, and fishing. 
Not only the fact oriented but also intuition.