基幹系システム、いわゆる会社が業務を遂行するにあたって必要な業務システムの、設計に対する指南書というとチープな印象になってしまうが、今後長年に渡って読まれるであろう名著の予感がする。
"残"にフォーカスしたデータモデリングが、現実の非同期的な業務を情報システムとして巧妙に写し取っており、前半それだけでも読み応えを感じた。また、本書由来のアイデアでは無いそうだが、エンティティをロールとして扱うという着想が、近年のコンパウンドスタートアップのプロダクト戦略に繋がる着想だという気づきもあった。例えば、Rippling は従業員データをエンティティと据えて、給与支払い先というロールに見立てて給与計算サービスをローンチしている。そんな考え方が本書にも登場する。基幹システム開発に携わる非エンジニアにも一読の価値があると思われる。
後半の11章以降は、内容として難しく感じられ、著者が伝えたい内容を完全に受け止められた気がしない。これは私の未熟さの現れと受け止めた。
コンパウンドスタートアップのグラフデータを中心に据えたプロダクト開発については Off Topic でも聞ける。こちらも面白いです。
前半はオブジェクト指向UIとはが解説され、後半は実例を伴うワークショップ形式の解説が続く。どれも非常にわかりやすい。
本書は、デザイナーだけでなく、ソフトウェア開発に携わる人々全般に向けて書かれている。オブジェクト指向UIは、チームで共通言語として醸成されるドメイン知識と一緒に煮詰められ、互いに認知すべき前提知識と考えて差し支えが無いと思う。
アプリケーション開発を、ユーザー目線によるデータモデリングを起点とし、それをベースとしたオブジェクト指向UIまでをチームの共通認識として据える。ソフトウェアエンジニアは、そこから永続化層までのインピーダンスミスマッチを解決する存在と言って良いのではないかと思わせた。
一読の価値があると思います。
プロダクトドリブンなセールス・マーケティング戦略について書かれた本。近年(といってもこの本が書かれたのは2年以上前)フリーミアムやフリートライアルを活用することで、プロダクトの価値を素早く体験してもらうことが競争力になるという。
タイトルからは複利的なテンプテーションを感じたが、顧客が抱える課題に対して、ソリューションが明確である領域、つまり問題領域の成熟度が高いレッドオーシャンを渡るプロダクト戦略という印象だった。
例えば、業務フローをITテクノロジーによって改革したいといった、いわゆる DX 推進をミッションとしているエンタープライズ企業に向けたサービス開発においては、まだ Sales Led の領域だと思う。
いずれにせよ、最終的に向かう方向としては Product Led であろうと思う。
既存顧客の要望に応え、継続的に技術革新を怠らなかった企業が、破壊的技術革新(イノベーション)によって淘汰されてしまうジレンマについて書かれた本。破壊的技術革新によって生まれた製品は、その時点において例外なく既存顧客のニーズに沿うものではないため、優良企業とされる組織が資源を投資出来ない。
本書では、組織の技術ではなく、戦略とコスト構造を革新する必要があると語られる。そのために必要なこととして、破壊的技術の開発を、主流組織からスピンアウトした独自の価値基準を持つ小規模な組織にて、失敗することを前提に試行錯誤できる環境を与え、新たな市場を発掘することとしている。
初版から20年以上経った今でも、本書で語られた内容は古さを感じない。このジレンマにはほとんど物理法則と同等の力学が働いていると感じた。
前作イノベーションのジレンマでは、持続的イノベーションと破壊的イノベーションが引き起こすジレンマについて語られた。続編となる今作では、破壊的イノベーションを利用した具体的な製品戦略について語られる。本書では、既存事業を成長させるためには持続的イノベーションが重要だが、新成長事業として成功する確率が高いのは破壊的戦略であるとされている。
顧客の分類を、属性ベースではなく、状況ベースで分類し、顧客が片付けなくてはならない用事に対して、破壊的な製品を提供することで、小規模で新しい市場を発掘する。既存企業は、組織の構造的に新市場のビジネス規模には関心を持つことができず、持続的な製品でより利益率の高い製品開発にリソースを投下する。技術の進歩は、顧客のニーズ拡大よりも早いスピードで進化する。そのため、持続的製品は顧客のニーズを飛び越え、破壊的な製品は顧客のニーズに追いつく。このような事業を成功に導くための3要素として、資源、プロセス、価値基準が紹介されている。既存事業で得た収益の一部を、意思決定権限を持つ責任者が、既存の枠に囚われることのない事業計画とコスト構造の中で進め、小規模でありながら早期に収益化を目指すこととしている。
前作イノベーションのジレンマからより具体的な内容に突っ込んでおり、やや難解な章もありつつ興味深く読むことができた。