Yusuke Hatanaka

November 25, 2023

This month I read. Nov, 2023


製造業界関連の to B SaaS を展開するスタートアップ企業に転職が決まり、来年から新たな環境でソフトウェアエンジニアとして働くことになった。

ソフトウェアエンジニアである前に to B SaaS を提供する者として、業界ドメインに対する理解が必要であることは言うまでも無い。製造業における中心は工場であり、これらの書籍からは、工場が人・モノ・金をどのような考えで扱い、どのような業務プロセスが存在しているかを学ぶことができる。
日本の製造業は、人口減少による人手不足が大きな課題となっており、IT による生産性の向上が求められていると聞くが、その道程は険しいと感じる。

例えば、人間が紙に記録している情報は、IoT デバイスによって記録を自動化しようというアイデアは誰でも思いつくものだが、そもそもネットワーク環境が整っていない工場や、IT 化着手以前に、工場ごとに違う設備を利用しているといった標準化の課題もある。

生産とは、原材料を加工し製品にすることで付加価値を生み出す産業である。そのため、赤字工場は資源の無駄遣いという見方となり、社会的に存在価値が認められないそうだ。昨今の物価高に対し、日本の GDP が減少傾向にある中で、商品価格を大きく変えることもかなわず、それでも利益は出し続ける必要がある。そのような状況で、IT 化に向けた追加投資を出すことが果たして可能なのだろうか?という感想を持った。


しかしそれでも IT 化を進めなければならないと強く主張しているのが本書である。
日本の製造業がなぜ遅れを取っているのかという著者の考えが随所に散りばめられており、強い意志のこもった内容となっている。

エンジニア向けに書かれてることもあり、生産管理システムが、企業リソースとしての人・モノ・金をデータとしてどう扱うかべきかが丁寧に解説されている。専門用語が多く出現するため、内容を理解しながら読み進めるには苦労する。実際に仕様を決めたり、システム化する段階で再度参照するといった使い方が良いかもしれない。


カスタマーサクセスと製品サポートは大体同じじゃないのという人におすすめなのが本書。全然違う。

これまでの売り切りソフトウェアは、販売時点で LTV の 90% 以上を獲得できていた。販売後は、定期的にサポート費、メンテナンス費をもらい受けるというのが一般的なビジネスモデルであった。
そのため、製品サポートは顧客からの要望に対してソリューションを提供するという受け身の体制となっていた。
しかし、SaaS の登場により、顧客はオンデマンドにサービスを消費できる時代となった。一般的な SaaS ビジネスにおいては、販売時点で LTV の 10% 程度しか獲得することは出来ない。そのため、販売後が本番であり、企業は契約をリテンションするための努力が必要になった。また、オンラインで簡単に利用開始および停止が可能であることから、これまでのような受け身の体制では、簡単に競合に顧客を取られてしまう。
そこで登場した概念がカスタマーサクセスとなる。
カスタマーサクセスは、顧客の成功を第一に考え、サービスの利用を継続してもらうことに全力を注ぐ。
これは、SaaS ビジネスに関わる全職種の人々が持ち合わせておくべき考え方だと感じた。

本書は、カスタマーサクセスの登場背景や、実践に向けての 10 の原則が解説されている。単純に読み物として面白いので、個人的におすすめできる。


紹介した本順に読み進めたわけだが、カスタマーサクセスよりも先に本書を読んだ方が理解しやすかったかもしれない。個人的に、今回挙げた書籍の中で一番おすすめしたいのが本書である。

本書は、自伝的な語り口で書かれており、著者がこれまでどのような考えで SaaS を売ってきたかを追体験できる。
マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスといったチームが、共通の目標に対してデータドリブンに有機的なフレーム(ザ・モデル)を構成する様には、工学的な美しさのようなものを感じる。
長年ソフトウェアエンジニアとして働いてきたものの、具体的に顧客にどのようにサービスを売っているのか何も知らなかったと気付かされた。


インサイドセールスと聞いて、テレアポ的なものを想像する人におすすめなのが本書。
本書はインサイドセールスの実践にフォーカスした内容となっている。インサイドセールスの登場背景や、企業における立ち位置を俯瞰、理解しておくために THE MODEL を先に読んでおくことをおすすめする。

企業によってインサイドセールスの役割には多少幅の違いがありそうだが、簡単に言えばマーケティングで獲得した有望リード(MQL)から、見込み客を(SQL)掘り上げてセールスにパスすることがインサイドセールスの役割となっている。

最初に読んだときは、セールスが兼務した方が良いのではないかと思ったが、 THE MODEL には分業によるオペレーションの最適化が重要であるとの見方が書かれていた。サッカーで例えるとわかりやすく、セールスというストライカーに確度の高いパスを出すのがインサイドセールスだ。
特に、インサイドセールスは、ターゲット顧客かつ確度が低い顧客を見込み客に育て上げる(ナーチャリング)役割があり、これは非常に重要な考え方である。
SaaS サービスの CPA(顧客獲得単価)はそれなりに高い。マーケティングで獲得したリードをなるべく無駄なく活用(THE MODEL ではリサイクルと呼ばれていた)するには、過去に失注した顧客や、見込み薄と判定されたリードの掘り起こしが重要となる。そういった細やかな管理が求められるのがインサイドセールスという理解となった。


以前 START/FM で柴田さんが紹介していて興味を持った本書。
情報社会における個性のコモディティ化に対する違和感や閉塞感を問題視し、人が生来持ち合わせているクリエイティビティを起点としたビジョンの創出プロセスをワークショップ形式で体系的にまとめた本。
これまで読んできた書籍が、データドリブンな積み上げを重視したいわゆるファクトベースなアプローチを語ったものが多かっただけに、本書を読み進めるには何か頭の違う部分を活性化する必要があった。
何もしない時間「余白」を作ることや、モーニングジャーナリング、組み換え可能なメモ、ビジュアルメモなど、ちょっと実践してみようかなと思わせられる。その他、紹介されているワークショップはチームビルディングとして実践してみると面白いかもしれない。


Go言語を使ってプログラミングしていると、これどうやると良いかなと思うことがままあると思うが、その答えが大体まとまっている本。今後何度もパラパラと参照することになるだろう。
初心者よりは、ある程度書いたことのある中級者が手に取ると理解しやすい内容だと感じる。
紹介されている Tips には、CPU、メモリ、並列プログラミング、GC といった一般的な教養から丁寧に解説されているものも多く、とてもわかりやすいしためになった。とてもおすすめ出来る。

MVP(Most Valuable Publication)

About Yusuke Hatanaka

I'm working as a software engineer in Japan. I like reading, watching basketball game, and fishing. 
Not only the fact oriented but also intuition.