Keisuke Horota

November 12, 2022

2022年版 ここ1年くらいでつくったサービスを供養する

こんにちは。
東京でコーダーとして活動している母良田です。

去年も同様の趣旨で趣味でつくったサービスの振り返りをしたのですが、今年もやっていきたいと思います。

Moment

https://moment.ooo/

このサービスはおそらく僕史上では最も思想を込めたもので poolsuite.net に多大な影響を受けており、また、Momentというワードを選定するにあたっては、取得可能なドメインがあるかという兼ね合いもあるのですが、北嶋徹氏のソロデビュー作品にして最高傑作である film A moment からも着想を得ています。
(これが最高傑作かどうかについての異論は認めます。)

簡単に言うと写真投稿メディアのようなもので、アプリケーションに登録したユーザにはこのようなメールを送信しています。

端を折って言うと、

なんか今の時代はみんな着飾ってるけどそんなことはどうでもよくて、生活の何気ない瞬間のほうがよっぽどエモいのでそういうのをやっていきません?

というようなメッセージになっています。

意図としては、InstagramやTikTokへのアンチテーゼ的な意味合いも含まれたもので、きれいなフィルターがかかったものではなく、街の風景や食った飯や、なんでもいいのですが、日常の瞬間を切り取ってほしいというもので、そのための制約として1日に5回しか写真を撮れない、アプリケーション上で撮った写真しか投稿できないという仕組みにしており、まだまだ僕の技術と表現力が足りずに納得のいくクオリティにはなっていませんが、最終的な写真にはフィルムカメラのような質感を与えたくて色々と試行錯誤をしていました。

1日に5回しか撮影ができないといった類の強めの制約も、それ自体が優位性になり開発側の意図を伝えるためのシンプルな装置になり得ると考えていました。

o1080079014820704764.jpg


ファッションとか音楽というのはトレンドが廻り廻っているという話があります。

今では、昭和レトロっぽいものが逆にクールだと言われたり、シティポップだとか言って日本の昭和歌謡が世界でも一定の地位を得ています。

全体的には、おそらくZ世代と言われているところを堺に、富豪的な志向から非富豪的な志向へと移り変わっているような気配を個人的にはここ3、4年くらいは感じていたところで、インターネットサービスにおいてもそれは例外ではなく、BeReal というアプリケーションが2022年初頭あたりから若者に人気を得ているらしいということにも個人的には納得感があり(リリースは2020年らしいです)、思想が近いものをつくっていた身としてはある種の悔しさを覚えると同時に、僕がやったことを遥かに超える強い制約を出してきたことへの感嘆の意を覚えたのであります。

ハッシュタグやストーリーはWebの世界での偉大なインターフェースの発明だったと思いますが、BeRealのプッシュ通知と時限付きの写真投稿というのもまた、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた素晴らしいユーザインターフェースの発明でした。

この空気感が経済と連動したものなのかどうかは良く分かりませんが、トレンドが廻るのだとしたら、あと10年か20年後にはまた富豪的な価値観がクールとされる時代に戻るのかなあという気もしているので、次の世代のインターネットサービスにはまたリッチさが求められるようになると思います。

ARが普及した世界においてはそれは例えばゴリゴリに可愛い3Dアバターとかフィルターとかそんなものの周辺で、またその次の世代では可愛すぎる3次元オブジェクトへのアンチテーゼが巻き起こるでしょう。


Audio player

持て余していたドメインを使用してとあるサービスをつくったのですが、なんか色々とグレーな気がするので割愛します。


3ch

https://3ch.app/

夜はまさに、大暗号時代。

世間ではWeb3というものが大きな潮流としてあるようだということは誰もが感じ取っていることと思いますが、ソフトウェアデヴェロッパーの僕としてもブロックチェーンには関心を寄せており、最初に見たときのビットコインは一桁万円代だったのにという悔しさと最初に触って愛用していたCoincheckのセキュリティインシデントを思い出してしまう今日このごろです。
(Coincheckは今でも利用している良いサービスです。あれにチャット機能を実装した人は天才だと思っています。)

FbdIq8-UYAEdwdj.jpeg


とにかく、盛り上がり湧き立つブロックチェーンでなんかしてぇんだ!
ということを日々考えていたのですが、暗号にも経済にも疎い不学な僕としてはどうしたもんかと考えていたところ、いよいよEthereum周りの開発環境的にもいろいろと出揃ってきたというタイミングで、なにかいい題材がないかと思いを巡らせていたところ掲示板をつくろうという発想に至り、24の間のちょうどいいドメインを取得しました。

動機としてはブロックチェーンに触れればなんでもいいというところもありましたが、最終的にはスレッド、レスポンス型のよくある掲示板、BBSの方式で、スレッドの作成者はNFTを鋳造することができて、それはスレッドに紐付いている。
NFTとしてデータをチェーンにおいてあるのでもちろん OpenSea でも見れるというシンプルなアイデアです。

いわゆる草コインなどに用いられるであろう ERC-20 や、NFTなどのユニーク性を担保するための ERC-721 という規格は、つまりはインターフェースであり、共通の関数が実装されていることによりその規格を実現しているもので、最小限必要な部分のソースコードは十分に監査されたものとして公開されていたりします。
(私は OpenZeppelin を使用しました。)

Solidityによる開発とEthereumメインネットへのデプロイは完全に初体験であり、それ自体が面白かったというのはあるのですが、スマートコントラクトとしての実装はほとんどが前述の共通仕様のものであり、それを少しサービスの仕様に合わせてカスタマイズするという程度のものです。

名前からもお察しのとおり、ニュアンスとしてはこの掲示板というのはつまりは便所の落書きであり、都会の路地の掃き溜めであり、そんな世界だけど、そんな世界もまた素晴らしいというもので、ユーザ層もそういったあたりを想定していましたが、スマートコントラクトをブロックチェーン上にデプロイしたところで僕のモチベーションは最高潮を迎えてしまいユーザも集まらないまま放置状態となってしまったのでありました。

分散化の夢を語っておきながらP2Pノードはパブリッククラウドに乗っていたり開発者は自分自身でサーバを構築してノードを立てるわけではなく Infura などのサービスを使うので結局リスクは集中してるじゃんとか、Web3ってどこがWebなんでしたっけみたいなことが話題に上がっていたりしますが、共通のインターフェースに乗ってデータが分散しているというのは間違いないと思いますし、単純なアートとしてのNFTみたいなものにはあまり興味はありませんが、個人的にはまだまだ面白い領域だと思っているので今後も注視していきたいという気持ちはあります。
(本丸はMMOのような形態のゲームだと思っているので、スクエニさんには期待しています)


いかがでしたでしょうか (いかがでしたでしょうか)

今回紹介したものはいずれもユーザ投稿型のメディアであり、とても成功したと言うには程遠い結果で、去年も同じようなことを書いた気はしますが、
鶏と卵問題 a.k.a 個人開発者マーケティングできない問題
がどうしてもついてまわります。

サービスの初期においては例えば運営でコンテンツを自演して盛り上がっている感を出すというのは必須だと思うのですが、製品をつくったことに満足してその時点でモチベーションは下降傾向にあるので、その後のことに脳を切り替えて頭を使うというのもなかなか厳しいなあというのが去年に引き続いての課題であると感じています。

アイデアを構想中の段階がテンションとしては最高潮で、これは最高の何かができあがるぞとつくり始めてしまうものですが、完成してしまえばそれは大したものでもなかったように思えてきてしまうものです。
また、本当に良い製品であればユーザがそれを見つけて使ってくれるというのは真だと思うのですが、それを知ってもらうための活動をしなければいけないというのもまた真です。

次回はこのあたりの精度を上げた状態で、またなにかをつくれたら良いかなと思います。

それではさようなら。


About Keisuke Horota