だいぶ前になりますが、年末年始にニューヨークに行きました。その日は凄い雪で、気温も氷点下、とてつもなく寒い日でした。
ガイドブックに載っていた有名なパンケーキの店に行きたいと妻が言うので、朝から店まで向かいました。
店に着くと、多くの人(多くはガイドブックを持っていたので日本人だと思います)が、寒い中で店の前で待っていました。一応店に入って店員に
「どのくらいかかる?」
と聞くと、
「30分から1時間はかかるかな。紙書いて。」
と言われました。
僕も妻も並ぶのは大の苦手。加えて今日は極寒。せっかく来たけど諦めて帰ろうかと思ってた矢先、すぐ目の前にガラガラのオシャレなカフェを見つけました。
そこで店員に
「今日超寒いじゃん?目の前のカフェいるから、順番になったら電話してくれない?」
とお願いしたら、当たり前のように
「いいよ。電話番号教えて?」
とあっけなく言ってくれて、紙切れに僕の電話番号をメモしてくれました。その時は英語ができなかったので、本当に中学生くらいの英語で話したんだと思います。
本当に電話があるか不安でしたが、店を出て、雪の中を一目散に目の前のカフェに向かって、妻とパンケーキ屋が見える窓際の席でコーヒーを飲みながら待ってました。おそらく、周りにいる人たちは「こいつらは諦めたんだな」と思っていたと思います。何せ店の外は極寒なので、待つか待たないかは凄く重要な選択です。
1時間くらいたって「そろそろかな?」とチラチラ店を見てたら、その店員が店の中からクイクイ(来い)みたいな仕草をしたので(それが見えるくらい目の前でした)、コーヒーを片付けて向かいの店に戻りました。すると、席が用意されていて、そのスタッフさんが接客してくれて、美味しいパンケーキが食べられました。もちろんそのスタッフにはチップを多めに渡しました。
僕らが目の前のコーヒー屋から行列のパンケーキ屋に入っていって、そのまま席に着く様子を外で見てた人たちは「え??」という感じになってました。その店は予約不可なのに、僕らが暖かいカフェから待たずに人気パンケーキ屋にスタスタ入っていったわけですから、まあそうなります。
これを体験した時に思ったのは、もちろん並んでた方々が愚かだというようなことでは決してありません。日本ではその行動が当たり前だし、そんなことができるなんてどこにも書いてないからです。
そうではなくて、その時強く感じたことは、
「あ、この国では自分が何をしたいのか、して欲しいのかを自分で考えて、自分でちゃんと言わないといけないんだ!」
ということです。
のちのち、あるアメリカ人から
「ルールがなければ自由だし、もしルールがあっても、そのルールを守るかは自由だよ。ただ全ての結果の責任はそいつにあるけどね」
と言われました。
その店員さんが単純にいいやつだったのか、その日たまたま機嫌が良かったのか、チップが多く欲しかっただけなのか、いつもそうしてるのか、寒いから例外を認めてくれたのかはわかりません。
もう10年近く前の経験になりますが、ニューヨークでのこの日の出来事は今でも強く心に残ってます。