Shoho Kozawa

April 28, 2023

田舎に2年間住んで感じた現実

渋谷から逗子に引っ越してから2年が経ちました。逗子は自然に恵まれた素晴らしい街です。夏になると、多くの人たちが海を楽しみに訪れ、それぞれの時間を過ごしています。ビーチで泳いだり、日光浴を楽しんだり、新鮮な海の幸を味わうこともできます。海だけではなく山にも囲まれているため、自然を身近に感じることができ、とても心地よい生活が送れています。

一方で冷静にこの街を見ると、関東圏とはいえ逗子は田舎です。国勢調査を見てみると、現在の逗子市の人口は、たった約56,000人しかいません。人口が56,000人程度の地域というのは、都市圏だけでなく地方から見てもけっこう田舎なんです(参考)。

もともと少ない人口のこの町でも、もちろん人口は減っています。2040年には1975年と同程度の人口まで減ることが予想されます。

IMG_2576.PNG


IMG_2575.PNG


そしてよりマズいのが高齢化です。現在すでに逗子の人口の約30%が65歳以上の高齢者です。逗子市の高齢化率は31%で、20年後には40%を超えることが予想されています。人口の40%ですよ?想像すらできないレベルです。

平日の朝にスーパーなんかにいくと、本当に(冗談じゃなく本当に)高齢者ばかりなんです。逗子市の人口を2009年度と2017年度で比較すると、総人口は1%減少している一方で、高齢者は14%増加しています。特に75歳以上の後期高齢者人口は、なんと28%も増加しているという、非常に深刻な状況に直面しています。

猛烈な少子高齢化が襲っています。

こうなってくると、これから住民向けのサービスを向上させるどころか、維持するだけでもかなり厳しい状況になります

たとえば、バスの運行本数が減る、もしくは撤退する路線がこれから増えると思います。電車の運行本数ですら、もしこのまま人口が減ったら減少するかもしれません。逗子市民がよく利用するスーパーマーケットはおそらくOKストアでしょうが、人口が減ればスーパーの売上は下がるので撤退だって十分ありえます。OKストアが撤退した場合、比較的高級品を扱っている地元スーパーを除けば、大型スーパーが街から消えてしまうことになります。タクシー会社が撤退したらタクシーはこれまで以上に捕まらなくなります。ゴミ袋の値段が上がったり、ごみ収集の頻度が下がることも考えられます。毎年やっていたイベントが中止になったり、道路が補修できなくなることも考えられます。

確かにこれは悲劇的なケースですが、決して妄想ではありません。こういうことが起こっても全く不思議ではないんです。人口減少、少子高齢化というのは本当に恐ろしいことなのです。

ぼく個人で言えば、今は別に困っていません。それは自分がまだ高齢者ではなく、お金もそれなりにあるためです。病院には車で行けますし、バスは使わないし、タクシーも呼べるし(しかし、すでにこの町では終電近くになるとタクシー乗り場は行列、雨が降ると一瞬でGoアプリどころか電話でもタクシーが捕まらないくらいなのです)、幸いにもとても良い学童も見つかり、子供の教育にはとても満足しています。Uber Eatsも使えますし、Amazonもちゃんと利用できます。車で20分ほど走れば、人口40万人の横須賀市にショッピングモールやイオンもあります。都心への移動もグリーン車を利用すれば1時間かかってもそれほど苦ではありません。何より海があって、のんびりしていて、最高なのです。

今の自分にとって、逗子はいい町です。とても満足してます。

ただし、それはおそらく今だけです。自分が50歳や60歳になったときのこの町のことを考えると、状況はかなり厳しいのだろうと思います。

何度も言いますが、人口たった55,000人、高齢化率30%は相当やばいです。そしてこれからますます急速に人口が減り、税収は減り、高齢者が急増します。町の魅力を外から来た人たちに伝え、遊びに来てくれる人をもっと増やし、移住者をもっと増やさないと、住民への基本的なサービスを改善するどころか、現状のサービスを維持することすら難しくなります。

参考: 鉄道・バス大減便の先にくらしはどうなる?

愛知県新城市では、市街地でただひとつ営業していたタクシー会社が、ことし3月に廃業。近隣のタクシー会社が事業を引き継いだものの、市内を走る台数は僅か7台です。
多摩、日野両市にまたがる百草団地内のスーパーマーケットが6月末に撤退し、住民らが困惑している。7月からは臨時の対策として食品などを積んだ移動販売車が停車するようになったものの、団地住民の高齢化が進むなか、買物弱者の発生を危惧する声も聞かれる。

それでも逗子はラッキーです。日本最大都市の東京と横浜から近く、海もあります。僕はこの街に週末多くの人が外から来ることはとても良いことだと思っています。

もちろん、道路は渋滞するし、海辺も少し騒がしくなります。しかし、来てくれるだけで御の字なんです。たとえちょっと道が渋滞しても、いつものカフェが行列になっていても、訪れてくれるだけで感謝すべきです。どんどん来てくれと思ってます。それが地方の田舎町が生き残る(いや生き残れなくても、少しでも延命できる)唯一の手段だからです。

だから週末に来てくれる人、移住してきた人に、僕は心から思います。

「来てくれてありがとう。心から歓迎します」

しかし、逗子に限らず田舎町にずっと住んでる方なんかは、都会から人が来てほしくないと考える方も大勢いるのも事実です。静かな環境を求めているからなどの理由があるでしょう。それらの意見も否定はしません。僕自身も渋滞や混雑した店は最も嫌いなので、いつも避けているくらいです。その考えを理解はできます。

だけど一方でシンプルに「そんなこと言ってると、この町、死ぬよ?」とも思うんです。

渋谷ならいいですよ、六本木ならいい、大阪ならいいです。渋谷区民が「最近外国人の観光客多すぎだよね」というのはわかります。それから、田舎に住んでる人であっても、若い人やお金を持ってる人、引っ越しが簡単にできる人もオッケーです。自分の人生のステージに合わせて移動すればいいので将来住んでる町がどうなってもそれほど問題ありません。しかし、それ以外の方々にとっては町の住民サービス維持は死活問題なのです。

人がいないと住民サービスが維持できません。人が来ないと、お金がなくなって、道路が補修できなくなって、子供への教育投資ができなくなって、防災のための予算がつかなくなって、街灯が切れても取り替えられなくなって、バスはなくなり、スーパーや大型チェーン店は撤退して、電車の本数は減って、街から人がいなくなって、空き家が増えて住環境や治安が悪くなります。

日本中のあちらこちらでこれが現実に起きます。

嘘だと思うなら、2007年に破綻した夕張市の現状を見てみてください。これは極端な例で自分の町だけはこうならない?そんなのはバイアスです。

  • 少子化が進む中で7つあった小学校、4つあった中学校はそれぞれ1校ずつに統廃合され、図書館や美術館などの施設は軒並み廃止された
  • 公園は整備されなくなり、医療機関も縮小された。
  • 新たに入湯税やゴミ処理手数料などが導入される一方で、各種税金や公共料金も引き上げられた
  • 破綻前と破綻後を比べると、市民税が3000円から3500円に、軽自動車税は1・5倍、下水道使用料は10立方メートル当たり1470円から2440円に引き上げられた。ちなみに下水道料金は東京23区の約2倍である
  • 集会所や公衆便所や小中学校などの公共施設は次々に閉鎖され、残された公共サービスの水準も全国最低
  • 老朽化した市営住宅を直すお金も、危険な廃屋を取り壊すお金もない

実際、逗子も数年前には財政危機の状態にあったそうです。その時には小学生の通学路にある横断歩道の交通整理員の削減が起きました。約160の事業が廃止されたり、縮小したそうです。お金がなければ行政サービスはなくなります。これは現実なんです。そして人口が減ってその商圏の客数が減れば、民間は撤退しますこれも現実です

この前テレビを見ていて驚愕したことがあります。それは、2021年に秋田県内で生まれた赤ちゃんの数がたった4335人だったということです。秋田県全部ですよ!秋田県全体でたった4,300人しか赤ちゃんが生まれてないんです。同じ期間で秋田県で死亡した人は約16,000人、1年間で秋田県は11,600人も人が減ってるんです。そしてこれが毎年起こり、そしてその減少量はどんどん増えていくんです。

こんなことが秋田だけじゃなくて、多くの田舎でこれから加速度的にどんどん起こります。これは決まってるんです。

だから僕は、田舎に住んでいる人ほど、少しでも新しい価値観を勉強して、取り入れて、魅力を伝えて、外の人たちに少しでも来てもらえるように努力すべきだと思っています。古くからのよくわからない慣習をいまだに守っていたり、たとえば「ママは家にいるよね」みたいな化石みたい価値観が前提で設計された制度が残っていたり、町内会に入れとか、ゴミ出し当番やれとか、そんなことを当たり前にやってるようじゃダメなんですよね。

あとは、もし田舎に住むなら1人1人が若いうちからいざとなったらいつでも都心に戻れるように心も体もお金も準備をしてないとヤバいと思います。

将来週1回の通院が必要になった時、あるいは子供が遠くの学校に行きたいとなった時、あるいは今まで勤めていた会社と折りが合わなくなって辞めたい時に、自宅を売って住宅ローンを一括で返して、少し家は狭くなるけど総合病院があって、交通機関もそれなりに安定していて、学校や塾もある中核都市に引っ越しできる人がどのくらいいるでしょうか?もしくは慣れ親しんだ田舎の家を別荘として残したまま都会に引越しできるくらいの資金や自由度がある人がどのくらいいるでしょうか?

気分を害された方はすみません。「そんなに都心がいいなら都心に帰れ!田舎にくるな!」思う方も正直大勢いると思いますが、これが渋谷に10年間住んでた自分が、田舎に2年住んでみた正直な感想です。

逗子がこれほど悲劇的になるかはわかりません。それなりに強い都市だとは思っていますが(だからこそ、逗子を移住先に選んだわけですが)、これも自分の住んでいる町だけは大丈夫だという「正常性バイアス」かもしれません。少なくとも確定していることは、日本中のあちらこちらの田舎でこれほどまでに悲惨的な未来が待っているということです

厳しい言い方をすれば、町は存続させたいけど混むから都会から人が来なくていいとか、人口は増やしたいけど移住してくるならちゃんとこの町のやり方を学んで欲しいとか未だに言っている人に言いたい。

おまえは一体何を言っているんだ」と。

今の自分にとって逗子は素晴らしい町です。満足しています。友人たちや近隣の方との関係も良好だし、みんなフレンドリーで自分の人生をエンジョイしてるし、子育てもしやすいし、スタバだってあるし、小さな美味しい店もたくさんあります。家から仕事をする日は、朝から海沿いのカフェに行ったり、隣町の葉山にあるコーヒー屋さんに行ったりしています。人生が豊かになりました。今はまだどんどん新しいお店も増えてるし、移住者も多いし、結構本気でオススメできます。少子高齢化は避けられない現実ですが、この町のいいところが少しでも長く続けばと思ってます。

そろそろ GW です。5月は気候もいいし、逗子はとても過ごしやすいですよ。もし予定がないなら遊びに来てみてください(ぼくの知り合いの方はぜひご連絡ください)。

About Shoho Kozawa

Working@Google👨‍💻 Traveler✈️ Tesla 🚘 Angel investor👼 Wine Lover🍷Luck is where preparation meets opportunity🤞
 
X / Instagram / Blog

📩shoho@hey.com