Shoho Kozawa

June 23, 2021

「美容常識の9割はウソ」を読んだ

大学で4年間だけですが化学を専門的に学んだこともあり、化粧品売り場で耳にする言葉や、健康食品のパッケージに書かれていることに過度に反応してしまいます。

  • 美容成分が肌の奥深くまで入り込んで
  • デドックス効果が期待できます
  • 敏感肌用の方には・・・
  • 今の流行りはノンシリコン
  • 天然由来成分でできていて・・・
  • オーガニック成分が・・・

よくもまあいろいろ作り出すものだと感心してしまいます。

そんな時に偶然「美容常識の9割はウソ」という本を見つけて、買ってみました。読みやすいのでコーヒー片手に1-2時間で読めます。

著者は、国立病院機構東京医療センターで形成外科長をされている落合博子さん。現役バリバリで日本最高レベルの国立病院に勤務する医師で、形成外科医として火傷による皮膚移植や、舌癌で失われた舌の再建、顔面骨折など、人間の表面部分(つまり手で触れるところ)にかかわる様々な治療を行われています。言ってみれば高度な知識と技術を持つ、皮膚の専門家というわけです。

この本は、そんな落合さんが形成外科医の専門的知見から、現在の美容情報に対して意義を唱えていく本です。

こうした形成外科医の観点から、いま世の中にあふれているさまざまな美容情報を眺めていると、「なんでそんなことをする必要があるんだろう?」「効果があるとは思えないな」と感じることが、本当にたくさんあるのです。

肌に化粧品ごときが浸透するわけない


私は医師ではありませんが、このくらいの知識なら持っています。

肌に、化粧品ごときの化学物質を手で塗ったくらいで、その成分が皮膚の中に浸透していくことなんてない

そもそも、皮膚というのは、外部からの様々な刺激に対して人間を守る盾のようなものです。火傷などで皮膚がなくなってしまうと、人間はどんどん体内の水分を失ってしまい、やがて死に至ります。皮膚はそうならないように体を守っています。

私は大学生の時にいろいろな実験をしてきました。嘘だと思う人もいるかもしれませんが、私の大学生活は毎日こんな感じでした。


大学生の時に書いていたレポート(懐かしい)

大学時代は様々な実験を行ってきましたが、その際にもっとも気をつけたのが薬品が皮膚に付着することです。これだけは避けなければいけません。危険な薬品は、実験用メガネをして、手袋をして、ドラフトと呼ばれるレンジフードのようなところで取り扱います。

多くの人はターミネーターのような映画の影響なのか、塩酸や硫酸など〇〇酸が皮膚に付着すると、皮膚が溶けて人間がアメーバになると思っているかもしれませんが、実は塩酸や硫酸はちょっと手についたくらいだと平気です。本当に怖いのは水酸化ナトリウムなど塩基性(アルカリ性)の薬品で、これは皮膚を文字通り本当に溶かします。多くの人が思っている皮膚のバリアを破って体に浸透するわけです。

むちゃくちゃ痛いです。本当に

私も1度、実験台に垂れていた数滴の水酸化ナトリウムに気づかず、素手で触ってしまったことがあります。まさか水酸化ナトリウムが垂れてるなど思いもしないので、初めは水かと思いましたが、ヌルヌルするのですぐにわかりました。「ヤバい!まさか!」と思い、すぐに流水で緊急処理しましたが、それでもどんどん火傷のように痛くなって激痛です。ちなみに私がそれに気づかず、その手で目を擦っていたら、目は完全に失明していました。

皮膚の奥深くまで浸透するというのは、それほど深刻なことなのです。水酸化ナトリウムじゃなくても、意図的に調合された化学薬品でなければ、そんな簡単に体の中に浸透などしません。子供でも触れるようなところにポンと置かれているようなモノが、人間の皮膚に簡単に浸透するなどあってはいけません

科学者の功績に感謝し、科学技術を淡々と信じたい

科学技術は一朝一夕で達成されるものではありません。数え切れないほどの失敗があり、恐ろしいほど淡々とした日々があり、それでもほとんどの場合はうまくいかず、本当に限られた幸運の持ち主だけが、神様のしているチェスのルールを少しだけ横から覗くチャンスがもらえる、そういうものです。

私たちは科学技術が生活の一部に入り込むと、あたかもその存在が遥か昔からあったかのように当たり前に感じてしまいます。その当時は画期的だと思われた技術であっても時間が経てばに飽きて、不満を言い始め、疑い始め、そしてもっとセンセーショナルで派手なものを求めてしまう。

体中の毒を解毒するデドックス。
自分の周りのウィルスを無毒化できる空間除菌。
飲めば美しくなれるとされるサプリメント。
ヒーリング効果があるマイナスイオン。
つけるだけでテレビを見ながら痩せられる健康器具。

テレビである食品が体に良いとタレントが言えばスーパーから消え、テレビショッピングでは毎日のように新しいサプリメントや健康器具が売られ、デパートの1階には肌の奥深くまで浸透する謎の液体が入った高価な小瓶が並ぶ。

人間を刺激を求めます。結論を求めます。自分だけが何か特別なことを知れたと思いたい。自分だけが知っている隠された世界を友達に教えてあげたい。そう思いたい生き物なんです。そしてそれを商売にしようとする人が忍び寄ってきます。

だから私はそんな明るい世界ではなく、淡々とした科学技術を、淡々と信じていきたいと思っています。わかることなんてほんのちょっぴりしかないかもしれませんが、何か聞いたときにはほんとかな?どういう仕組みなんだろう?他の人はどんなことを言っているんだろう?そんな疑問を持って、少しは自分で適切な情報ソースから調べて、自分で納得して前に進んでいきたいと思っています。

***

この本では、巷で信じられているいろいろな定説(噂)について科学的見地からコメントをしています。例えば…

  • コラーゲンを食べてもコラーゲンはできない(そりやそうだ笑)
  • 美容のために必要なゴールデンタイムなど存在しない
  • 化粧品と医薬部外品と医薬品の違い
  • 化粧品は『浸透させる』と生命が危険!?
  • 『オーガニック』『天然成分由来』に騙されてはいけない
  • 肌荒れ・乾燥肌は〝洗いすぎ〟が原因だった
  • 化粧品の『経皮毒』は科学的にはあり得ない
  • 〝鉱物油が危険〟は昔の話─安全性が高い保湿剤
  • 石けんとボディーソープ、使うならどっち!?

そして肌を健康に保つための極めてシンプルな提案も書かれています。おそらくもっと強い口調で書きたかったところもあったと思いますが、そこは著者の優しさが随所に感じられます。

高い化粧品を買うお金があるのであれば、よければこの本を手に取って、これまで地道に1つ1つ積み上げられてきた科学に裏付けされた、退屈で素晴らしい真実を感じてほしいと思います。

きっと化粧品何十個分も価値があると思いますよ。

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