Shoho Kozawa

July 30, 2023

上りのエスカレーターで勝負しよう

新卒で入った会社の社長(現在のCARTA Holdingsの会長)の宇佐美さんには多くのことを教えてもらいましたが、事業を立ち上げる上で一番大切なことを聞くといつも「上りのエスカレーターに乗ることだ」と教えてくれました。「上りのエスカレーター」というのは、市場が伸びているということです。事業を考えるときは、自分のやりたいことを見るのではなく、自分が勝負しようとしている市場全体が成長トレンドにあるのかを常に確認しろと言う教えでした。

でも、その当時の23-24歳の私にはよくわかりませんでした。だって、よくビジネス書なんかを見ると「好きからはじめよう」「自分の情熱を大切にしよう」「自分が成功したのはそこに情熱があったからだ」なんて言葉が並んでいて、自分に解決したい課題があるとか、自分が本当にそこに情熱を捧げられるかとか、内発的動機の方がはるかに重要なように見えていたし、市場が伸びてるか?などという外的要因はそれに比べれば些細なことのように思っていたからです。でも宇佐美さんは一貫して「ビジネスを作るんだったら、絶対上りのエスカレーターから始めろ」と言い続けていました。

数十年経ち、今ではこの言葉の意味が自分なりにほんの少しだけ理解できできる気がします。

まず紛れもない事実としてあるのは、もし伸びてない市場に飛び込んでしまったら、そこで成長することはとてつもなく困難だと言うことです。自分が戦う場所が全体として伸びてない、もしくは下降トレンドでの中で、それに逆らって自分が上ってことは信じられないほど難しく、もちろん不可能だとは言わないまでも、挑戦の難易度が飛躍的に上昇します。本当に大変なことです。

逆にエスカレーターが上向き、つまり市場が成長している場合、その上昇するエスカレーター、つまり市場の流れに押し上げられ、事業開発の難易度は格段に下がります。これは私自身がインターネットの世界、デジタル広告テクノロジーの世界など、市場全体が爆発的に成長しているマーケットで生きてきたから実感しています。

この話はなにも事業開発に限った話ではありません。自分の時間や自分のキャリア、自分のお金などををどこに Bet するか(張るか)を考える時にもめちゃめちゃ重要なことです。

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たとえばキャリア形成なんかを考えてみると、どうしても我々は「自分が何をしたいのか?」という軸から考えがちですが(それが倫理的にも正しい気がするから)、それと同じくらい、自分が進もうとしている先のエスカレーターが登っているのかは信じられないほど重要なことです。これは確信をもって言えます。たしかにそんなこと考えずにやりたいことを選べる人生でありたいものですが、これは紛れもない現実です。

確かに反例はいくらでもあるでしょう。市場が全く成長していないところで大成功を収めた例は数えきれないほどあります。しかし、幸運の女神が微笑んでくれる確率を考えてみると、僕には低いように思います。それでもそこで微笑みを待つと言う人はいます。もちろんそれは個人の自由です。

人生は波乗りのようなものです。どんなに素晴らしいサーファーでも波がなければ勝負はできません。いいサーファーの絶対条件は、いい場所でいい波を待てることだそうです。「いい波に乗れるか」と同じくらい「いい場所で待てるか」は大切なことです。

さて、自分のキャリア、自分の資産、自分の時間など、あなたの大切な様々なアセットを賭ける先、もしくは自分の家族、自分の子供など大切な人の人生を共に賭ける先の市場は登っているでしょうか?

「自分が賭ける先のマーケットが良いマーケットなのか?」を考えることは「自分が何をしたいのか?」を考えることと同じくらい(局面によってはそれ以上に)大切なことだと思います。

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