この投稿は、2020年1月10日にNoteで公開したものを転載したものです
2019年の年末年始休暇は、オーストラリアのメルボルンを訪れました。メルボルンは、イギリスの経済誌「エコノミスト」が毎年発表している「世界で最も住みやすい街ランキング」で2017年まで7年連続首位だったオーストラリア第二の都市で、現在オーストラリア国内で最も人口が急増している都市でもあります。
最新の2018年の調査では、首位の座を7年ぶりにオーストリアのウィーンに明け渡してしまいましたが、現在でも世界中から観光客が訪れる大都市です。
今回メルボルンに来て感じたのは、様々なテクノロジーが、当たり前のように社会に浸透してる心地よさでした。
決して驚くようなテクノロジーじゃないんだけど、社会インフラに対してスマホを軸にした様々なサービスが驚くほどシームレスに浸透してるから、いろんな場面で「結局求めていたのはこれだった」ってやつにたくさん出会ってるわ。— Shoho Kozawa (@s_kozawa) December 28, 2019
決して驚くような最先端のテクノロジーではありませんが、社会インフラの隅々に当たり前のテクノロジーがうまくハマっていて、「あ、求めてたのはこれだ。便利!」という瞬間を所々で感じました。
オーストラリアはデータ通信が太っ腹
最近の海外旅行では、現地のSIMカードを購入することが一般的になっています。多くの都市で、空港を降りるとプリペイドSIMカードの広告を目にします。メルボルンも同様で、空港を降りると多くのキャリアがプリペイドSIMカードの販売をしていました。メルボルンでは競争環境が激しいためか、各社が様々な割引を行っており、空港価格がカタログ価格より大幅に割引されていました。
今回購入したのは、LeberaというキャリアのプリペイドSIMカードです。データ通信が1ヶ月で24GB、現地の電話番号も利用できるものです。定価は29.9ドルのところ、空港内の店舗で半額キャンペーンを行っており、15ドル(1,100円) で販売されていました。24GBなので、使っても使っても使いきれませんでした。
クレジットカード決済をするためにはユーザーが追加料金を払う。だからクレジットカード対応店舗率100%
オーストラリアの決済文化で最も特徴的なことは、ユーザーがクレジットカードを利用した際に手数料を徴収する権利を法律で店舗に認めているということだと思います。
日本では、カード会社と店舗の契約で、クレジットカード払いのユーザーに対するあらゆる差別を禁止しています。そのため、ユーザーにクレジットカード払いのときだけ追加の手数料を請求することはもちろん、ランチや決済金額が少額の場合の利用拒否(カード利用は3000円以上など)も本来であれば利用規約で禁止されている事項なのです。たとえば下記は、三井住友銀行トラストカードの例です。その他のクレジットカード会社でも同様の加盟店規定を設定しています。
出典:三井住友トラストカード
オーストラリアではまったく逆です。ユーザーがクレジットカード払いを選択すると、手数料をユーザーから店舗が徴収することができ、多くの店ではユーザーに追加料金を上乗せしています。もちろん、手数料を取る店ではその旨をユーザーにはっきり表示する義務があります。 これはホテルやタクシーでも例外ではありません。手数料はカードブランドによって決められていることが多く、American Express や Dinners は高額に設定されていることが多いようです(これらのカードに対応していない店舗も多数ありました)。
今回の旅で最も高額な追加手数料を払ったのは、ショッピングモールのフードコートでランチの時に払った+10%でした。
このような事情から、オーストラリアではクレジットカード決済浸透率がほぼ100%な一方で、現金もかなり多く使われています。私は1週間ほどの滞在で、現金を1円も利用しませんでしたが、現地の方は現金も多く使っているようでした。
全てのクレジットカード機器が非接触決済(タッチ決済)に対応していた
日本でクレジットカードを使うときには、
- カードを店員に渡す
- 店員がカードを機器にセットする
- 店員がPOSシステムを操作する
- 店員がユーザーに暗証番号を押すように求める
- ユーザーが暗証番号を押す(日本ではその際店員は後ろを向くのがマナー笑)
- 通信が発生(数秒。。。)
- カードの控えをとレシートが別々に出てくるのでもらう
という作業が発生します。日本はクレジットカード決済がとにかく遅いのです。この煩しさを避けるために現金にしている人もいると思います。
メルボルンのクレジットカード決済は爆速
最近のクレジットカードには非接触決済機能と呼ばれるものがついています。非接触決済機能とは、クレジットカードをSuicaのようにタッチするだけで支払いを完了させることができる機能です。一定の金額以下であれば、暗証番号を打ったり、サインをしたりする必要がありません。
驚くことにメルボルンのほぼ全ての機器が非接触決済対応端末なのです。つまりメルボルンでクレジットカード決済を行う場合、
- 店員がPOSを操作
- ユーザーの目の前の機器が瞬時に光る
- ユーザーがクレカをSuicaのようにタッチ
- 1,2秒で決済完了
- レシートがいらなければそのまま立ち去る
と、ほぼ全ての決済が3-5秒以内の爆速で完了します。サインも暗証番号も必要ありません。
メルボルンは非接触決済対応端末の普及率が信じられないほど高く、店舗はもちろん、駐車場、コインランドリー、自動販売機、自動券売機、ガソリンスタンド、全て対応していました。
大型店舗では銀行が提供している機器を使っているところもありましたが、小規模店舗やカフェなどではSquareを使っているところが多かったように思います。Squareは一度登録しておけば、レシートが自動的にメールで送られてくるため便利です。
タクシーアプリがApple Payと連動
メルボルンでは当然UBERのようなライドシェアが利用できますが、子供がいる場合はチャイルドシート着用の義務があるため(7才未満はチャイルドシートが必須)チャイルドシート着用が免除されているタクシーを使いました。
今回メルボルンで利用した 13cabsというタクシー会社では、アプリ配車に対応しており、Apple Pay を利用することで会員登録やクレジットカード登録を一切することなく目的地設定、配車、支払いまでをシームレスに行うことができます。Apple Payと連携することで会員登録はもちろん、クレジットカードの登録すら求めないデザインに感動しました。
アプリをダウンロードして最初に表示されるページ。
「Quick Ride with Apple Pay」を選べば、一切個人情報を打ち込むことなく配車から支払いまでを行うことができます。
日本もUBERを禁止にするくらいなら、タクシー会社がこのくらいのテクノロジーには当たり前に対応して欲しいものだと思います。
Apple Pay が浸透している海外
実はこれに似た感動を数ヶ月前に The Guardian(イギリスの大手新聞)でもしました。
The Guardian ではジャーナリズムを守るという名目で各記事でユーザーに寄付を呼びかけています(黄色の部分)。その寄付が Apple Pay から信じられないほど簡単にできるのです。会員登録もいらず、サイドボタンのダブルタップで支払うことができます。
今回はこれに似た体験を、メルボルンのタクシー配車アプリですることになりました。
パーキングメーターも集中管理
道路に設置してあるパーキングメーターも、当然アプリ経由のオンライン決済に対応済みです。アプリから駐車料金を支払います。駐車場に設置されている支払い機器もクレジットカード決済対応。硬貨しか使えない日本とは大違いです。
駐車スペースがリアルタイムで管理されているため、アプリから付近の空いている路上駐車スペースを即座に探すことが可能です。この辺りの決済以外の部分でも、テクノロジーがあたりまえのように浸透していました。
ETCもアプリ決済
オーストラリアの主要都市では、無料のフリーウェイの他に、有料の高速道路もあります。ただし、日本のように料金所はなく(つまり現金決済は不可)カメラでナンバープレートを読み取り、あとから請求される仕組みです。
レンタカーの場合は、ナンバーから利用料がレンタカー会社に請求され、後日手数料が付加されてレンタカー会社から利用者に請求されるのが一般的なようですが、実は事前にETCアプリをダウンロードして借りている車のナンバーを登録しておくと、GPSで有料高速道路を自動検知して請求が行われ、アプリ上から超格安の手数料で支払いが行えるのです。
このアプリはかなりよくできていて、
- 返却日を登録することで、同じナンバープレートの利用でもそれ以降の請求が来なくなる
- 身に覚えのない請求が来てもアプリから利用確認して支払を選択できる
- GPSをoffにしていても2,3日待てばナンバープレートから後日請求をしてくれる
と大変便利なのです。 もちろんアプリから様々な近隣店舗のクーポンを貰えたり、近くの駐車場を探すこともできます。
決して今っぽい最先端のサービスではありませんが、高速道路に設置されたカメラからナンバープレートを確実に読み取り、そしてアプリ経由でクレジットカード決済、そのデータを企業はマーケティングに使えて、ユーザーはお得な情報がもらえるという一連のエコシステムがスムーズに繋がっていることに感動しました。
[番外編] レストランのメニューに載っているQRコードから料理の写真を確認
メルボルンのレストランやカフェの一部では、メニューにQRコードが載っていて、そこから料理の写真や詳しい素材の情報などを自分のスマホで見ることができました。
これ系のサービスを考えると、どうしても「アプリを作って、POSと繋げて、オーダーもできるようにして、会員登録させて、クーポン配って。。。」と壮大なプランを考えがちですが、単純にメニューにQRコードが載っていて、そこからユーザーは自分のスマホで料理の写真と簡単な素材の情報が見れるページに食べるだけでもかなり便利だと思いました。
この他にもチケット類はだいたい Apple Wallet で受け取れたり、多くのレストランの予約が Google Mapから直接できたりと、テクノロジーがコンパクトな都市になめらかに入り込んでいる感触はとても心地よく、驚くほど美味しいコーヒーと合わせて、また訪れたいと思わせてくれました。