Shoho Kozawa

April 9, 2021

不確実性を楽しめ

よくアメリカ企業(アメリカの社会)は自分の役割に忠実なことが当たり前などと言われますが、それはあながち嘘ではなくて、一般的には、決められた役割と目標に対して着実に業務を遂行することが当たり前とされています。

採用は役割(ジョブ)に対して行われ、どんなジョブに対して、どんなレベルの人を、いくらの給与を払って雇うのかを厳密に定義することが一般的です。いわゆる「ジョブ型採用」と言われるものです。

評価では、自分が与えられた役割(ジョブ)と、成果を数字で説明することが良しとされます。したがって、多くの人が「自分のチーム、自分自身の役割と貢献を可能な限り可視化したい」と考えます。

マネージャーは四半期、半年、1年の優先順位と戦略を明確化して、達成するべき数字を規定し、メンバーはそれに対して忠実に実行して、その結果に応じて給与を貰います。効率的で透明性が高く、多くの企業が目指している「成果主義」と呼ばれるものはこんな感じかと思います。

正しい。

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最近、ある小さなチームの集中討議で5分くらい Lighting Talk を頼まれました。

私はそのチームの皆さんにあえて「小さなチームで大きなことを達成するために、ときに目標に囚われず、今必要だと思うことを自分で考えて、行動する楽しさを感じてほしい」という話をしました。

その昔(といっても今からたった100-200年前)、多くの人々は毎日工場に行って工業製品を作っていました。きっと管理者は、さまざまな目標を決めていたと思います。その工場での生産量や品質の目標を決めて、生産性を可視化して、高い品質の製品を安定して作るためにさまざまな努力をしていたと思います。これが「会社」の始まりです。

しかし、ソフトウェアやサービスを提供している私たちは違います。市場は日々変化し、新たな情報が日々入ってきます。様々な事柄が毛糸のように絡み合い、複雑性はますます増しています。

そんな世界では、不確実なこと(uncertainty)やあいまいさ(ambiguities)を受け入れて、今日やるべきことを自分たちで柔軟に決められることは、時にとてつもない強さを発揮します。

もちろん、目標を全面的に否定しているわけではありません。意味のある目標は、進む船の羅針盤になり、チームが正しい方向に進んでいることを確認するための大切な手段になります。

しかし、目標は羅針盤であり法律ではありません。船体に穴が開けばリーダーの指示を待たず、一刻も早く全員で水を掻き出さないといけないし、食料が足りなくなれば、近くの島で食料を調達しないといけない。時には船を止めてこれからの嵐に備えて全員で点検することが必要かもしれません。たとえ当初の目標が3ヶ月後にある島に到着することだったとしても、今やるべき事は本当にこれなのかを何度も何度も問い続ける覚悟が必要なのです。

そしてリーダーは、たとえ当初決めた目標と違っていても、チームのために貢献してくれたメンバーを正当に評価する必要があります。

短期的なことに目を奪われないために正しい目標設定することは大切です。一度決めた目標にとらわれず、今やるべきことを考えて行動することも大切です。黒か白かではなく、その間にある無限のグレーの中で、そのチームにとって最も最適な色を探すことが何より大切だと思っています。

なお、正しくない目標(とその運用)は、目標が全くないより何倍もタチが悪いことも付け加えておきます。

私が尊敬するBasecampは、6週間の計画しかありません。目標がないんです。それは今に集中するためです。「NO HARD WORK!: 無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方」がオススメです。




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