Shoho Kozawa

April 7, 2023

解雇規制が厳しい国が実は多い

日本では「解雇規制が厳しすぎる」と言われることがあります。

この意見は、解雇規制が緩いアメリカとの比較でよく言われます。インターネット業界の多くの会社がアメリカ企業だから当然です。たしかにアメリカと比べれば、日本は解雇規制が厳しい国です。しかし、日本と同様に解雇規制が厳しい国は世界中にたくさんあります。日本以外の国がすべてアメリカのように自由に解雇できるわけではなく、この考えは極端で誤りです。多くの国では、労働者の権利保護のために一定の解雇規制が存在しています。アメリカのように解雇が比較的自由な国もある一方で、フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、オランダなどでは厳格な解雇規制があります。

むしろアメリカが異常とも言えます。例えばアメリカでは、上司が朝のコーヒーをこぼして機嫌が悪いからといって部下を解雇しても、法的な問題はありません。アメリカでは「at-will雇用」という考え方が一般的で、雇用主と労働者の双方が事前の通知や理由なしに雇用契約を終了できます。この考え方が広く受け入れられているため、アメリカの解雇規制は他国に比べて緩やかです。その結果、アメリカの企業はたとえば数カ月以内に数百人以上のレイオフを実行できます。

一方、すべての国がアメリカのような仕組みではありません。解雇規制が厳しい国々としては、フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、オランダ、韓国、イスラエルなどのヨーロッパやアジア諸国が挙げられます。これらの国々では、労働者の権利が保護されており、解雇には一定の手続きや条件が必要です。例えば、フランスやドイツでは、労働法が厳格であり、企業はレイオフ前に労使協議会と交渉することが法律で義務付けられています。欧州では、労働者の利益団体と事前に交渉しなければ、解雇は事実上不可能です。

どの程度雇用が守られているのかを示すEPL 指標というものがあります。EPL(Employment Protection Legislation)指標とは、雇用保護法規に関する指標です。これは、労働者の権利と雇用安定を保護するために、各国が制定している雇用保護法の厳格さを定量的に評価するものです。OECD(経済協力開発機構)が作成しており、会員国や非会員国を対象にデータが収集されています。

この指標によると、日本は確かに「解雇しにくい国」には属すると考えられますが、日本よりも解雇規制が厳しい国、同程度に厳しい国は多く存在します。フランス、韓国、ノルウェー、オランダ、ドイツなど多くの国が日本と同程度の雇用保護法規を持っています。

日本の雇用保護法規が異常であるという考えは正確ではなく、日本と同様、もしくは日本より解雇が厳しい国は世界中にたくさんあります。日本以外の国がすべてアメリカのように自由に解雇できるわけではまったくありません。

参考: グーグルとアマゾン、欧州で人員削減進まず-厳しい労働法の壁

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