Shoho Kozawa

September 19, 2023

九州にある最高の病院

3連休にちょっとした用事があって、福岡に帰省していました。目的は、福岡の近郊にある病院を経営されてる先生のご自宅でお食事をさせていただける機会をいただいたためです。そこでその先生が取り組んでいるいろいろな先進的な取り組みについてお話をお聞きしました。食事が終わった後は、実際に休診中の病院の中を裏側まで案内していただきました。

もうそれが本当に感動で、こんな先生とこんな病院がもっと増えればいいなと言う気持ちと同時に、日本の多くの病院がこのようになるまでにあと何十年かかるんだろうと言うなんとも言えない気持ちにもなりました。

今日はその話をシェアしたいと思います。

小さな病院

その病院を福岡から高速を飛ばして1時間ほどの小さな田舎町にあります。病院の規模はクリニックよりは大きいですが、総合病院ではなく、来院患者数は1日大体100人ほどだそうです。現在は入院機能は持っておらず、すべて外来のみです。

圧倒的なデジタル化

まず、その病院は信じられないほどDXを進めています。

病院の予約が EPARK からウェブでできる事は当たり前。問診はウェブ問診です。マイナンバーカードを保険証利用することも当然可能。

1番驚いたのはデジスマ診療というサービスを導入されていたところです。このサービスは初診の予約から支払い、次の予約までを一括して管理できるサービスです。

まず患者さんは病院に到着するとスマホから病院内にあるQRコードでチェックインします。すると、それが診察券代わりにになって、受付に並ぶことなく待合室で呼ばれるのを待ちます。もし問診が必要でもこのアプリから行うことができます。

自分の順番が来たらアプリがプッシュ通知で教えてくれるのですが、運用も素晴らしく、駐車場のすべての壁にQRコードが貼ってあるため、患者さんは自分の車から出ることなく、自分のスマホでチェックインをして、自分の診察の順番が来るまで車の中で待つことができます。これによって院内感染を防いでいるそうです。

診療が終わったらなんと会計にも並びません。そのまま帰れます。受診料は、Uberのようにアプリに登録しているクレジットカードから自動的に支払われます。次回の診察の予約が必要な場合も、そのアプリから次回の診察の予約を行い、近くになればアプリのプッシュ通知でリマインドしてくれます。処方箋がある場合は、診察室で処方箋を受け取ることができます。

隣接する薬局もサービスが凄くて、もし時間がなかったら受付と会計、説明だけ先に済ませて帰れるそうです。するとスタッフが外に設置してある宅配ボックスに薬を置いておいてくれるので、患者は時間がある時に取りに行けばいいそうです。

「ほら、こういうのってちょっとしたことなんですが、便利じゃないですか」と簡単におっしゃる先生に「マジ凄いっす!」っていう子供みたいな反応をするのが精一杯でした(笑)

現金での支払いにも当然対応していますが、そこはもちろんセルフレジ。高齢者が使えるのか疑問でしたが、最近はセブンイレブンやスーパーでも同じような機器がたくさんあるので、みなさん問題なく使われているそうです。ほんと何歳になってもやればできるっていうのはその通りだなと思いました。

オンライン診療と在宅診療

オンライン診療や在宅診療にも積極的に取り組んでらっしゃいます。高齢で病院が来ることが難しい患者さんには、オンラインで診察を行って薬だけを届けたり、もしくはスタッフが自宅に訪問をして様子を見たりもしているそうです。

人生の最期を過ごす場所

人生の最後を過ごす場所は、多くの人が自宅か病院になるそうです。しかし自宅の場合は家族が介護で相当な負担を強いられます。一方で病院になると、長い長い人生の最期をとても孤独に、無機質な環境で迎えなければいけません。

先生は最近、病院から1分ほどのところに小さな平屋の住宅のような建物を建てました。その建物は個室が2部屋、それぞれの部屋にトイレと小さなキッチンがあるだけです。真ん中にはお風呂と洗濯機置き場があります。

そう、ここは人生の最期を家族と共に過ごしたい人のための建物なのです。

このような建物のことを「ホームホスピス」、最近では「看取りの家」などと言うそうです。

先生曰く、この建物に入る方というのはおそらく食事もかなり取れなくなっていて、お風呂もそんなに長くは入らないからキッチンはとても簡易的なもので(主にご家族向け)、お風呂も共用。ただし人間の尊厳のためにトイレをきちんとすることはとても大切なので、トイレだけはどれだけ時間がかかっても気にならずプライベートが保たれるように2つの部屋にそれぞれ専用で設置しています。

一見すると、まったく医療施設には見えない平屋の住宅で、患者さんは自分の人生の最期を家族と迎えることができるのです。もちろん見た目は平屋の住宅ですが、医療施設なのでバリアフリーで緊急時はスタッフも対応をしてくれます。

先生とお話ししてみた

いろいろ見学させてもらって、まず私の感想はシンプルに「こんなことできるんだ!」と言う驚きでした。

医療機関は、保険診療だとクレジットカードの取り扱いや薬の宅配ロッカーなど色々な規制があって難しいのだろうと勝手に思っていましたが、そんな事は全くないそうです。「全然そんなことないですよ。できます(笑)」とのことでした。

もちろん、クレジットカード対応で言えば、数パーセントの手数料の負担は病院側になります。開業医と言うのはお医者さんであると同時に経営者でもあるので、3%ほどの手数料がかかることが気になると言う考えもわかるそうです。

しかしそれによって、例えばスタッフの負担が減って離職率が減ったり、効率化によって同じ時間で対応できる患者さんが増えれば、経営目線で見ても全体としてはいいはずだという考えだそうです。

一方で、それだけ効率化を考えている先生が、人生の最期を家族と一緒に過ごせる施設をわざわざ作ったり、在宅ケアや訪問診療等に力を入れているわけです。おそらくお金の事だけを考えたら、もっと効率の良いやり方や、もっと効率の良い稼ぎ方はあるはずだと思います。しかしデジタル化できるところデジタル化し、スタッフの労働環境を改善し、もちろん経営者として売り上げを考え、しかしながら、医療従事者として、人間の生死に関わるところに思いを持って取り組んでいく、そんな姿勢に心から感銘を受けました

現在先生が取り組んでいる事は、音声入力をすると自動的にカルテを作ってくれるサービスの投入だそうです。これによって先生だけでなく、数名の一緒に働いているドクターの労働環境の改善にも役立てると期待しているとの事でした。

こんな病院本当に欲しい

患者目線で言えば、一言で「こんな病院あったらいいなあー!」に尽きます。本当に便利だし、全てが効率化されていて、だけど工場のような無機質な仕組みではなく、医療機関として地域の皆さんに深く寄り添っていらっしゃいます。

最近では医療機関のデジタル化も進んで、遠隔医療なども徐々に導入されています。この分野のポテンシャルはこんなにも大きいとのかと驚いたとともに、この先生の取り組みに心から尊敬した、そんな時間でした。

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