Shoho Kozawa

March 27, 2021

「異文化理解力」 - 異文化のコミュニケーション

異文化理解力は、「個人的名著選」に選ばれている素晴らしい本なのですが、改めて第1章からじっくり読み直してみました。

この本では、多文化のチームで仕事をする際に頭の片隅にいれておくべきことについて、たくさんのエピソードと共に紹介されています。基本的には国や育った文化をベースにした話となっていますが、たとえば営業とエンジニアなど職種や役職の差から生まれる文化の差と置き換えても学ぶべきことは多くあるように思います。私自身も外資系企業で勤めるようになって、多くの人たちのこの本を推薦しています。

異文化理解力の第1章では、異文化間の基本的なコミュニケーション方法について学びます。

ハイコンテキストとローコンテキスト

「コミュニケーション」とはなんでしょうか?実は文化によってコミュニケーションのルール(掟)が驚くほど異なるのです。

コミュニケーションを大きく2つに分類すると「✳️ハイコンテキストコミュニケーション」と「✴️ローコンテキストコミュニケーション」となります。

それぞれを簡単に一言で表すと

✳️ ハイコンテキストコミュニケーション = 空気を読む
✴️ ローコンテキストコミュニケーション = 言いたいことガツガツハッキリ

となります。詳しい事例などは本書をぜひ呼んでみてください。

✳️ ハイコンテキストコミュニケーション

・良いコミュニケーションとは、繊細で多層的で表面的な言葉以外のさまざまな意味に左右される
・聞き手が理解できないのは話し手のせい
・学があり教養があるほど、話す際も聞く際も裏に秘められたメッセージを読み取る能力が高い
・子供に表面上の言葉を聞くだけでなく、どのように語られたのか?何を語られなかったのかにも注意を払うように教える
・表面上のメッセージが時として本当のメッセージではない
・多くのアジアの国々は相対的にハイコンテキストな傾向にある
・メッセージをほのめかして伝えられるため、聞く手に行間を読むことを求める

✴️ ローコンテキストコミュニケーション

・良いコミュニケーションとは「明確で曖昧さのないコミュニケーション
・できるだけ字面通り、曖昧さのないコミュニケーションをするよう無意識のレベルで訓練されている
・メッセージを正確に伝えることがコミュニケーターの責任
・メッセージを伝える責任は、話し手と聞き手の両者で共有される
・学があり教養があるほど、明快で曖昧さのないコミュニケーションを取る
・多くのアングロサクソン文化の国々は相対的にローコンテキストな傾向にある

日本は世界で最もハイコンテキストな国の1つ、アメリカは世界でもっともローコンテキストな国の1つ

この図は、本書で紹介されている国別のハイコンテキスト・ローコンテキストの度合いを示した図です。

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本書によると、日本は世界でもっともハイコンテキストな国なのです。「以心伝心」「気持ちを察する」、「空気を読む」。こうした概念はハイコンテキストコミュニケーションの極みです。本書でも日本の「空気を読む」という日本人以外にとっては驚くべき文化については、本書でもエピソードが掲載されています。

Link: How 'reading the air' keeps Japan running

そしてアメリカ企業に勤める私にとって大変残念なことに(😭)日本は世界でもっともハイコンテキストな国である一方、アメリカは世界でもっともローコンテキストにいる国なのです。それどころか、本書によるとアングロサクソン文化の国(主に欧米の国々)は、どのアジアの国々よりも相対的にローコンテキスト文化に位置しています

✳️ ハイコンテキストコミュニケーションの文化

日本が筆頭にアジアの国々で根付いている、相手を察してお互い空気を読みながら行うコミュニケションの文化

✴️ ローコンテキストコミュニケーションの文化

アメリカを筆頭に欧米の国々などで強く根付いている、言いたいこと明確に、ガツガツ、ハッキリいう文化

全ては相対的

本書で何度も指摘されていることが、ハイコンテキストかローコンテキストかは常に相対的だということです。「どこの国はハイコンテキストの文化だ」ということはなく「どこの国はどこの国に比べてハイコンテキストだ」としか言えません。

日本は世界で最もハイコンテキストな国なので、私たち(少なくとも私)から見ると、アメリカもオーストラリアもドイツもブラジルもフランスもイギリスも、誰もが同じようにローコンテキストな文化圏のように感じますが、ドイツ人から見れば、アメリカ人はハイコンテキストな文化である一方で、イギリス人はとてもローコンテキストな文化になるのです。全ては相対的なのです。

ハイコンテキストとローコンテキストを決める1つの要素「文化の歴史」

ハイコンテキストとローコンテキストの違いを生んでいるのが、その文化の歴史や言語です。外の文化の影響を受けず、長い時間かけて独自の文化が成熟され、そこに暮らす多くの人々が同じ言語を使う国々(たとえば日本)ではハイコンテキスト文化になり易く、一方で欧米のように歴史上、頻繁に他国との文化融合が発生した国々ではローコンテキスト文化になり易くなります。

🇯🇵 ハイコンテキストの日本

・同一民族が人口の95%を占める
・島国社会で数千年に及ぶ歴史がある
・多くの時間、他国から閉ざされた状態

→ 互いのメッセージを少ない言語数で汲み取れるようになった

🇺🇸 ローコンテキストのアメリカ

・共有する歴史は数百年
・それぞれが別々の歴史、言葉、バックグラウンドを持つ世界各国の移民で成り立つ

→ 何かを伝えたいと思ったら曖昧さや誤解が生じる余地をなくして、明快に伝えなければならない

異文化の人たちが同じチームで働くことの注意点

🇯🇵ハイコンテキスト文化と🇺🇸ローコンテキスト文化の人々が混ざり合い1つのチームで働くときには当然注意が必要です。私たち日本人は前述のように世界で最もハイコンテキストの文化にいるため、次のようなことに注意する必要があります。

🚨 ハイコンテキスト文化の人がローコンテキスト文化の人と働く時の注意点

⭐️ 「わかりやすく伝えられたでしょうか?」と気兼ねなく聞くこと
⭐️ できる限り透明で、明確で、具体的でいること
⭐️ 理由をきちんと説明すること
⭐️ 意見は透明性を保って主張すること。こそこそ主張しないこと
⭐️ あまりに礼儀正しくしないこと。空気を読んで礼儀正しくしようとしすぎて漠然とした印象を与えてしまうことがあるため

一方で自分が相対的にローコンテキストになる場合(極めてステレオタイプ的な発想なので嫌いな切り分けではありますが、わかりやすく例を挙げるとすえば、あなたがエンジニアだったり、論理的な考え方を好む性格だったりする場合など)は、そうじゃない人と話すときに、次のようなことに気をつけるとうまくまわります。

🚨 ローコンテキスト文化の人がハイコンテキスト文化の人と働く時の注意点

⭐️ 「言わない」=相手が情報を隠していると思わないこと
⭐️ 何を言ったのかではなく、何を意味しているのかを聞くこと。ハイコンテキスト文化の人たちは、恥や他人からの見え方を気にして伝えたいことと逆のことをあえて言って、相手に悟ってほしいと考えることがある(たとえば本当は給与に不満があるのに「いえいえ、満足です」と答えるなど)
⭐️ 物事が明確になるような質問をして、こちらから物事を明確にしていくこと
⭐️ 早々に決断をしないこと
⭐️ ハイコンテキストな文化では、「考えておきます」や「難しいですが検討します」などという言葉を使うが、多く場合検討してない、つまり No であることが多いことに注意する

異文化間で適切にコミュニケーションを取る際のとっておきの戦略

コンテキストコミュニケーションとローテキストコミュニケーションが混ざった多文化のチームでは、ローコンテキストでやりとりを行うことを事前に決めておくことがもっとも簡単な対処法です。

異文化間コミュニケーションのとってきおきの戦略

👉 ローコンテキスト(アメリカ型)でやりとりを行うことを事前に決めておく

もちろんハイコンテキストコミュニケーションにもいい点はたくさんあります。少ない表現で多くのことを伝えられたり、人間関係を円滑に構築しやすかったり、同一文化圏同士では極めて効率的なコミュニケーションです。しかし、ローコンテキストな文化の人が、ハイコンテキストなコミュニケーションを会得することは並大抵ではありません。それは、ハイコンテキストコミュニケーションの作法の多くが、明文化できるルールではなく、長い間ともに時を過ごしたことで自然と身につけたものだからです。

その点、ローコンテキストコミュニケーションは、後天的に技術で解決できる部分が多いのです。それはかつてローコンテキストコミュニケーションの土台がそのように出来上がったため当然です。

さまざまな文化の人たちと働く場合は、ローコンテキストコミュニケーションが鍵となります。

ローコンテキストコミュニケーションを行うために大切にしていること

最後に、私が実践しているローコンテキストコミュニケーションについて紹介したいと思います。それは

⭐️ 自分の考えを文章にして伝える

ということです。

私は何かを伝えたい時に、箇条書きでライトにまとめたり、スライドを作ってテーマだけ示すより、できる限り文章にして伝える癖をつけています。たとえばアメリカチームに何かを伝えたい時、何が問題なのか?何をして欲しいのか?具体的にはどこからどのような意見が上がってきてるのか?などを文章にしてまとめてチームにシェアーします。また事業計画もスライドではなく、まずは文章でまとめて、チームにフィードバックをもらっています

箇条書きやスライドではなく、きちんと文章にしてまとめると、論理が飛んでいたり、要素が抜けていたりすることにかなり気づけます。言葉では雰囲気で誤魔化せている部分や、聞き手が好意的に補完してくれている部分も、文章では書き手がパズルのように1つ1つ埋めていく必要があります。チームとディスカッションする際も、ミーティングなどしなくてもドキュメントをシェアーしてコメントを貰えばいいだけなので時間の節約にもなります。小さなプロジェクトでも、機能改善依頼でも、事業計画でも、まずは文章にまとめてみてください。

事業計画であれば

・なぜその事業をするのか?市場規模、成長率などのファクト
・これまでの戦略とその結果、そこからの学び
・それを踏まえた今後の戦略
・それを実現するためのチーム

これらを、箇条書きでもスライドでもなく、本を書く気持ちで文章にしてまとめます。思ったより初めは大変ですよ (笑)

以前、後輩であり、元同僚であり、尊敬するエンジニアでもある @suzu_v と一緒に働いていた時に、彼が

どんなに言葉が上手くても、自分の考えや議論の流れを文章にして適切な粒度でまとめられない人はダメなんですよ

と言っていたことがありました。その教えを今でも実践しています。

異文化理解力第1章では、そもそもコミュニケーションには大きく2つの種類があることが書かれています。これを基礎として、そして第2章以降では、文化の違いによって起きる さまざまなコンフリクト(衝突)が起きるシーン、その解決法について学んでいきます。

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