Shoho Kozawa

May 17, 2021

「SNS -少女たちの10日間-」が観れない

いま話題の映画があります。チェコのドキュメンタリー映画「SNS -少女たちの10日間-」。

実はこの映画を観れていません。週末に観ようかと何度も迷ったのですが、自分にも娘がいる立場で自分の中で整理がついておらず、まだ観れていません。実際に映画館に足を運んだ人のなかには、最後まで観ることができず、途中で気持ち悪くなって退出してしまった人も多くいるそうです(男女問わず)。

あらゆるネタバレ記事を読んで、自分の中で準備してからじゃないと見に行けない気がして、この週末たくさんの記事を読みました。

スクリーンショット 2021-05-17 8.39.03.png


この映画は、3人の小柄な無名の女優3人が、12歳と偽ってSNSのアカウントを作ってみたというドキュメンタリー映画です。

リアリティを追求するため、実際の子供部屋が映画スタジオにセットとして準備されて、実際に女優が子供の時に使っていたおもちゃ、写真なども準備。子供が話すようなチェコ語のトレーニングを受けて、窓から差し込む夕日は、実際に住んでいるはずの場所に合わせて人工的に作られ、完全なリアリティを追及します。

3人の女優は、このスタジオに作られた偽の子供部屋で10日間、12時から24時まで待機します。

出演者を守るためのルール

出演者を守り、公平性を担保するため次のようなルールが課されます。

1. 自分からは連絡しない
2. 自分が12歳であることを明確に告げる
3. 誘惑や挑発はしない
4. 露骨な性的な支持は断る
5. ひつこく頼まれば場合のみ裸の写真を送る。ただしその写真は合成された写真
6. こちらから会う約束はしない
7. 撮影中は精神科医や弁護士などに相談する

もちろんそれ以外にも警備、児童保護の専門家、性科学者など、想定される問題に対処するために、あらゆる専門家がバックアップに入り撮影がスタートします。

12歳の子供にたった10日間で送られたメッセージは・・・


12歳の見知らぬ女の子3人がSNSにアカウントを作りました。アカウントを作っただけです。なにもしてない。そのアカウントに10日間で何人の大人がメッセージを送ってきたと思いますか?

答えは、2458人。

10日間で2458人の大人が、見知らぬ12歳の子供にメッセージを送ってきました。

まじで気持ち悪い。どういうことだ?

想像の通り、メッセージを送ってきた大多数は成人男性で20歳から60歳。そしてもちろん・・・

大多数の成人男性はビデオセックスを要求し、自身の性器の写真やポルノのリンクを送信してきた。なかには恐喝する者も。

メッセージを送ってきた男性の1人は、スタッフの知り合いだった

スクリーンショット 2021-05-17 10.12.29.png

こんなことするやつは自分の遠くにいる違う星の人だろう。そう思っていた矢先、メッセージを送ってきた男性の1人がスタッフの知り合いなことがわかります。

彼の職業はなんと、子供向けキャンプの主催者。少女に次々と性的な言葉を投げていく。

読むだけで「もう嘘でしょ・・・」ってかんじです。

映画の最後に、その3人の少女とスタッフで、その男のところに問い詰めに行く場面もあるそうです。

映画では、メッセージを送った男性の1人として富裕層も出てきます。この映画の公開が発表されると、その富裕層の弁護士から「自分のクライアントが映画に登場したら、裁判を起こす」と電話があったそうです。ちなみに監督は「裁判を起こすということは、彼の行動が公になる。それによって社会現象になればいい」と判断したそうです。

チェコ警察が証拠品として押収

この映画はチェコで社会現象となり、映画の撮影映像はチェコ警察が証拠品として押収、実際に逮捕者が出て、裁判も始まっているそうです。

52人の男性と1人の女性が捜査を受けており、既に8人が裁判で有罪判決を受けました

映画を見た政治家たちは、サイバー環境における犯罪に対する取り締まりを強化することを決めました。また映画公開後に3つの省庁から連絡があったのですが、そのうちのひとつ、文部省は子どもたちへの性教育のカリキュラムを改正し、小学3年生から性教育を取り入れることを考えているとのことでした

現実に起きてる

冒頭に書いたようにこの映画を私はまだ観ていません。観てないけれど、観た人たちの意見を先に読みました。そしてきっと近い将来観ると思います。

デジタルの世界で生きてきる自分にとって、そして娘がいる親としての自分にとって、この話は完全に他人事じゃない。

もし自分が仕事でSNSに関わる仕事をしていたとして、これらの事実に対して意見を求められたら、たしかにいろいろないいわけはできるかもしれません。「利用規約で12歳は使えないようにしている」とか、「事件が発生したら警察に全面的に協力している」とか、「機械学習でそれらの危機の大部分を防いでいる」とか「このサービスによってこんなにも多くの人たちが恩恵をうけている」とか。

だけど、娘の親としてはそれで納得できるだろうか?

仮にこのような被害が利用者全体の少数だったとしても(きっとそんなことないんですが)、だけどその1人にとって、その経験は人生を破壊するほどの経験になり得る。それが自分の子供だったらどうするだろう。

この映画を15歳の息子さんと観たライターさんが、そのあとに息子さんと話したことを公開しています

これが現実。

監督はインタビューでこのように答えています。

少なくとも10年間以上前から存在していた現象だとは知ってはいましたが、近年、少年少女たちが自分の裸体の価値に気付き、躊躇いもなくそれを売るようになったということです。ただ仲間外れにされたくない、ただ携帯のアプリが買いたい、というような単純な理由のために。

これが現実。

自分の子供にいつスマホを持たせるか?この映画を見たら、As late as possible かもしれないし、Never かもしれない。スマホはもたせず、まずは Laptop にして、子供用のネットワークを分離、SNSを遮断するかもしれない。幸い自分はこのあたりの知識があるからできる限りのことはできます。だけど、どんなに防いでも抜ける方法も知ってる。

いま何かできろうだろう?

確かに、インターネットは人を便利にしてきたし、私も大好きだし、子供にもこのテクノロジーのパワーをたくさん使って、自分の可能性を切り開いて欲しい、そう思っています。だけど、現実にはこういうことがおそらくチェコだけではなく、日本でも、世界でも、起きてる。

だから付き合っていかないといけない。

仕事人としての自分は?

たしかにDAUやMAUやPVというウェブサービスにとって大切な指標をいかに達成し続けるのか?もっといえば、どうやって事業を成長させ続けるのか?はプロのビジネスパーソンにとって大切なことかもしれない。だけど、もし自分のサービスによって実際に人が修復不能なくらい傷つく可能性があるのであれば、ぼくらサービス運営側はその事実を忘れちゃダメだと思う。そしてもしかしたらほんの少しの配慮によって、人がその傷を負わなくて済むかもしれない。

私たち大人は、12歳の女の子に癒せないほどの傷を与えるだけの恐ろしいパワーを持っていることを忘れてはいけない。

現代の子どもたちが直面する危険をありのまま映し出した恐るべきこのリアリティーショーは、SNSと常に接するジェネレーションZ世代やその親たちに恐怖と共に迎えられ、本国チェコでドキュメンタリーとしては異例の大ヒットを記録。児童への性的搾取の実態を描いた映像として、チェコ警察から刑事手続きのための映像が要求された。実際の犯罪の証拠として警察を動かした大問題作がいよいよ日本公開となる。

公式ウェブサイトより

***


観てない映画のことを書くのは変なかんじですが、ちょっと心が整理されたので、週末にでも観に行ってみようと思います。実際に観たら何か変わるかもしれない。そしたらまたシェアーします。

参考


About Shoho Kozawa

Working@Google👨‍💻 Traveler✈️ Tesla 🚘 Angel investor👼 Wine Lover🍷Luck is where preparation meets opportunity🤞
 
X / Instagram / Blog

📩shoho@hey.com