年末が近づき、いわゆる来年の事業戦略策定がいよいよ佳境に入ってきました。
今年は少し変わった役割として、隣のチームの戦略作りをお手伝いしています。これがなかなか難しいんです。自分の直接の担当でもなければ、職務範囲でもない、レポートラインでもない中で、どうやって価値を出すのか、ずっとどうやって価値を出していこうかと考えていました。
もちろん最終的な意思決定は、そのチームのリーダーの方々が決めることだし、日々の活動もそのチームの人たちが行うわけなので、あまり引っ張りすぎても無責任だし、かと言って、全部「いいですねー頑張ってください」だけ言ってても価値はないわけです。自分はそのチームのいろいろな意思決定をよりスムーズにできるように全体を後押しするのが仕事ということになります。
もう少し引いて見ると、この役割ってコーチングに似ています。コーチングも、最終的な意思決定者、そしてそれに対して行動する主体がコーチを受ける人な中でコーチは価値を出す必要があります。本人に対して、意思決定や活動をよりやりやすくするためにサポートすることがコーチの役割です。そう思うと、いまの自分の役割も同じようなものです。
で、こういうシチュエーションでどんな価値を提供できるのか?をずっと悶々と考えてたんですが、最近この結論に至りました。
事実を整理して、明らかにしてほしくないことを1つ1つあえて明らかにする
まず、「事実を整理する」ということについてです。
みなさんも実感があると思いますが、戦略というのは往々にして分散しがちなんですね。特にボトムアップで考えると、いろいろな人が自分の経験から足し算で戦略に関わってくるので、付け足しで戦略が組み上がることがよくあります。足し算で戦略を積み上げていくと、リソースが分散してしまい、資源配分をうまくできません。
みなさんも実感があると思いますが、戦略というのは往々にして分散しがちなんですね。特にボトムアップで考えると、いろいろな人が自分の経験から足し算で戦略に関わってくるので、付け足しで戦略が組み上がることがよくあります。足し算で戦略を積み上げていくと、リソースが分散してしまい、資源配分をうまくできません。
もっと厄介なのが、足し算の戦略を無理やり1つの大きな戦略に書き換えるときです。そもそも足し算で戦略や戦術を組み込んでも、前提がそう作られてないので、よく見ると、繋がってない因果や相関が入ってしまって、ロジックが崩れてきます。
- 「あれ?そもそもなんでこれって大切なんだっけ?」
- 「なんでこのデータからこの結論なんだっけ?」
- 「こことここってなんで繋がるんだっけ?」
- 「あれ?ここってそれっぽく見えてるけど、必ずしもそうじゃなくない?」
みたいなかんじです。
事業だろうが人だろうが、全てを綺麗に論理立てて考えられてることなんてないですから、これを1つ1つ綺麗にしていくのが、事実の整理です。
外から入った人間にとっては、この作業が案外やりやすかったりします。なぜなら、長くその中にいる人たちは、ハイコンテキストでコミュニケーションできるので、行間を省略しても通じ合える部分がありますが、素人である私にはそれができないからです。だからこそ、あえて「これとこれってどう繋がってるの?」「なぜこの事実からこの結論が導き出されるの?」「こことここって1つ1つは正しいけど矛盾してない?」といったような質問を投げることによって、戦略の解像度を高めることに貢献することができます。
もう一つ大事なのは、「明らかにしたくないことをあえて明らかにする」という部分です。
英語には "Elephant in the room" という表現があります。象がミーティングルームにいるのに、みんな見て見ぬふりをしている状況のことを指します。人間には防衛本能があるので、たとえある事実や主張が正しいと感じていても、それが自分や周囲の近い人に不都合をもたらすとき、なかなかそれを正面から扱うことができません。
英語には "Elephant in the room" という表現があります。象がミーティングルームにいるのに、みんな見て見ぬふりをしている状況のことを指します。人間には防衛本能があるので、たとえある事実や主張が正しいと感じていても、それが自分や周囲の近い人に不都合をもたらすとき、なかなかそれを正面から扱うことができません。
例えば、ある事業の業績が明らかに落ちていても、その事業に関わっている仲間の努力を見ていると、厳しいことを言うのをためらってしまう。まさに象がそこにいるのに、誰も触れたくない状況です。もしくは、高い目標を掲げることには異論がなくても、それを達成するために自分の行動を変えなければならないとなると、最適解はわかっていても、途端に曖昧なロジックや逃げ道が見える目標設定に逃げたくなるものです。それも象がそこにいるのにいなかったことにする典型です。
コーチングでも同じですよね。自分の価値が目減りしてるんじゃないか?このまま年をとってキャリアを積んでいったらどっかで限界が来るかもしれない、みんな自分のことは心の奥底ではわかっているはずなんです。それでも現状を捨てるのが怖かったり、先延ばしにしたり、気づかぬふりをしたり、これでいいと無理やり言い聞かせたり・・・
そういう時に、心を鬼にして耳が痛くなるような質問を投げかけるわけです。
- 「これって結局何を追ってるのか?」
- 「今のままで現実的に実現可能なのか?」
- 「なぜこれを目指すのにこの選択肢を取らないのか?」
コーチングでいえば
- 「あなたはどんな需要に対して価値を出しているの?」
- 「それが価値だって言ってるけど、市場の他の人にどうやって勝つのか?」
そんな質問をどんどん投げかけます。
言ってみれば「みなさん、ここに象がいますよ!」と言う役割です。
でも、「事実を整理する」であっても「明らかにしたくないことをあえて明らかにする」であっても、やはり嫌われることが多いと思うんですよね。相手にとっては、前提条件でわかっていることをチクチク聞くわけだし、"Elephant in the room" であれば、まさに痛いところを突くことになるからです。「まじでこいつ空気読めねーな」って僕でも思うと思うし「めんどくさいなーこの人のサポートを受けるのやめようかなー」とか思っちゃいますよね。人間は弱いですから、やはり嫌なことや面倒なことを言われたり指摘されるのって嫌じゃないですか。
ビルの仕事は、人をよりよくすることだけだ。ただし、それは相手がコーチャブルな場合に限る。
だからどのコーチングの本にも書いてありますが、互いの信頼関係が必要だし、お互いの尊敬の念も必要だし、お互いのセットアップを最初に揃えることが大切なんだなと。
個人的には今回の経験を通じて、これをいい感じに言語化できたことは、けっこう良かったなと満足してます。