Shoho Kozawa

June 4, 2021

なぜ私たちは有給を取れないのか?

私はそれなりに休みを取るほうだし、今の会社はみんなそれなりに休みを取るのですが、いろいろな友人と話すと「取りたくても、全然有給取れないんだよね」と言っている人が結構います。逆に「なんでそんなに有給取れるんですか?」と聞かれることがよくあります。なぜ私たちは有給を取れないのでしょうか?

理由1: 病気の時のために権利を取っている

外資系だと病欠というのは「不可抗力」になので、病欠のための休暇が有給とは別にあることが一般的です。これを「Sick leave」と言います。風邪をひいたり、体調が悪い場合は、有給休暇ではなく、この「Sick leave」を使うことができます。Sick Leave は有給なので、休んでも給料が減ることはありません。日本の「忌引」と同じイメージです。

 ちなみに、二日酔いに Sick Leave を認めるべきか?という議論は、海外ではよくあるのです。


二日酔いは Avoidable (避けられる)病気なので、使わせるべきではないという人もいれば、理由はどうあれ、その人が少しでも早く職務に復帰することがチーム全体の生産性を上げるために重要なのだから Sick leave でもなんでも使わせて、早く復帰させることが組織の幸福の最大化につながると考える人もいます。

どう思いますか?

日本企業では、Sick leave はあまり一般的ではないと思います。私も前職のときは風邪をひいた時は有給を使っていました。風邪をひきがちの人は、風邪をひいた時のために有給を残しているという人も多くいるかもしれません。

理由2: 取る時に理由と事前申請と許可が必要

本来、有給を取得するのに理由などありません。ゲームをするためでもいいし、理由なんてなくてもいいのです。取りたいから取る、それでいい。しかし、会社によっては有給に明確な理由を報告させているところもあります。たとえば墓参りとか、結婚式とか、旅行とか。

また、本来は有給取得に事前申請や許可は必要ありません。明日休みたくなったから休んでもいいのです。しかし、会社によっては2週間前までの申請までの申請が必要なところもあるようです。ルールになっていなくても、会社の空気がそうさせているところもあります。

理由と事前申請、上司の許可が必要だと、よほどの意思をもたない限りは有給休暇など取れません。

ちなみに、一斉に有給を取られると業務が全く回らなくなるといった場合に、会社側は取得理由を確認して、取得者に優先順位をつけて、他の人には別日に取ってもらう権利はあります。しかしそれはあくまで複数人数が一斉に取得する予定があり、業務に著しく支障がでる場合に限るので、全員にこの権利を発動はできません。

もちろん、有給取得を制限したりする事は論外ですし、有給を取ったことでボーナスを減額したり、査定に影響させることも法律で禁止されています。

このあたりであれば、会社と戦ってもいいし、めんどくさいなら転職したり、異動したりするのが手っ取り早い解決策です。

理由3: 有給を取ったら、そのあとにその分の仕事をしないといけない

ここから比較的難しい問題に入ります。

もしあなたが工場で1日10個の製品生産を課されていて、1日間有給をとったら、有給明けに2日分の20個を作らないといけないとどうでしょう?多くの人はそれはおかしいというと思います。

現在の有給休暇の前提は、「1日有給を取っても、次の日に2倍の生産を求められない」という考え方です。たとえば、1日100Km運転しているバスの運転手が、1日有給を取ったからといって次の日に200Km走ることを課されることはありません。

しかし、現実はどうでしょう?たとえば、営業職であれば、3日有給を取ると4日目には4日分のメールの返信をしないといけないし、顧客対応をしないといけない。課されている予算も減りません。1日有給を取ったから自分に課されている四半期の予算が 89/90 になるわけではありません。

技術職であれば、理論的には休みを取れば、その分納期を伸ばせるべきです。休んでも納期が同じであれば、それは休暇とはいわず先延ばしです。

工場で「1日有給取ると次の日に2倍製品を作らないといけない」と言われるとアンフェアーな気がしますが、実は現在の多くの仕事では、有給を取っても課されている生産量は変わらず、仕事を先延ばしにしているだけで減ってない、つまり20個の生産が求められているシーンが多くあるのです。これによって、将来の自分の首をしめたくないから有給を取らないと言う人はいるようです。

私が、ある海外の同僚にメールを送信したら、自動返信メールが返ってきて、

X月x日までに送信されたメールは自動的にゴミ箱にいく設定になっているので、本当に重要なのであれば、件名に〇〇と言うキーワードを入れるか、x月x日以降にもう一度送信してください。

と書いている人がいました。これは休んでる期間の仕事を溜めない1つのアイデアだと感じました。

理由4: 有給を取ったら、周りの同僚がその分の仕事をカバーしないといけない

有給休暇を取れない最も大きな理由が、「自分が有給を取ると、周りの同僚たちに負荷が発生してしまう」だと思います。

たとえば営業チームであれば、自分が有給を取ってもチームの予算は変わらないから誰かが頑張らないといけなくなる。保育園の先生であれば、有給を取ったからといって受け入れる児童の数を少なくできるわけではないので、他の先生が頑張らないといけなくなる。自分が権利を取得することで同僚に迷惑をかけてしまう構造になっているのです。

以前、妊娠したある友人がこんなことを言っていました。

その人の上司はすごく優しく、妊娠の報告をしたら仕事を少なくしてくれたり、個人に課せられている予算を減額してくれたり、いつでも体調を第一優先にしてくださいと優しい言葉をかけてくれたそうです。

しかし、彼女が本当にして欲しいことは、自分のリソースをチームの計画から外してもらうことでした。彼女のリソースがチームのリソースとしてカウントされている限り、彼女が休みを取ったり、のんびり働くと、そのしわ寄せはチームの同僚に行ってしまうからです。結局その彼女は、少し早めに産休を取ることになりました。

まさにこの状態です。

マネージャーは認めよう、人は休む

じゃあどうすべきなのか?社員が1日有給を取ったら目標をその都度下げるべきなのか?もちろんそれは多くの場合で現実的ではありません。だから付き合っていくしかない。

チームのメンバーが健全に休暇を取れるようにするためには、やはりチームのマネージャーがそれらの可能性をあらかじめ可能な限りシステムの中に組み込むしかないと思っています。

そのためには、以前紹介したように80%のリソースをチーム全体のリソースを捉え、20%の余裕をいつも意識した組織運営をすることが大切です。

また加えて、特定の人がボトルネックにならないようにチームの仕組みを作っていくことも本当に大切だと思います。ある人がいないとワークフローが前に進まないとか、本番反映できないとか、資料のありかがわからないとか、そのような特定の個人に依存した運用は一つ一つ潰していくことが、結果的に中長期的なチームのサスティナビリティ(持続可能性)を高めてくれます。

ある会社では、ランダムに選ばれた人を突然強制的に自宅待機にして、それでも業務が滞りなく動くのかを確認する避難訓練(ファイヤードリル)を行っているところもあります。このような避難訓練をあらかじめやることもとても大切だと思います。

もし、長めの休暇を取る予定の人がいることがあらかじめわかっている場合は、可能であればそもそもマイルストーンや、リソースプランニングからその人の生産量を外すことも大切なことだと思います。それによって本人はとても気持ちよく休暇をリフレッシュすることができます。

***

上司やマネージャーは、チームが生産性高く回り続けるために様々な準備をしないといけない。もちろん、従業員がチームのメンバーや組織に対して、できる範囲で優しさを持つことは大切なのですが、その善意をあてにした運用、もしくは悪用した運用はやめるべきだと思います。

私は、真心がたっぷり入ったシステマティックな運用が好きです。


お読みいただきありがとうございました😄

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